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2004年04月28日(水) ■ |
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◆『オン・ユア・トウズ』アダム・クーパー、サラ・ウィルドー、マシュー・ハート、イヴァン・カヴァラッリ、他 |
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ゆうぽうと簡易保険ホール、19:00開演
(指揮:ジュリアン・ケリー) 作曲:リチャード・ロジャース、作詞:ロレンツ・ハート
ジュニア・ドーラン(音楽教師、実はダンサー): アダム・クーパー
フランキー・フレイン(ジュニアの教え子): アンナ=ジェーン・ケイシー シドニー・コーン(ジュニアの教え子、作曲家): マシュー・ハート ヴェラ・バロノワ(ロシアバレエ団プリマ): サラ・ウィルドー コンスタンティン(ロシアバレエ団ダンサー): イヴァン・カヴァラッリ ペギー・ポーターフィールド(ロシアバレエ団プロデューサー): ジリアン・ビヴァン セルゲイ(ロシアバレエ団団長): ラッセル・ディクソン アヌーシュカ: ジュリエット・ゴウ フィル・ドーラン二世(ジュニアの父): グレッグ・ピチャリー リル・ドーラン(ジュニアの母): ガブリエル・ノーブル
初日、行ってきました。『オン・ユア・トウズ』。 アダム本人が歌をうたう事は聞いていましたが、はたしてどんなものなのでしょう...。 ちょっと心配に思っていましたが、なかなか頑張っていたように思います。(笑) 何しろダンサーの声を聞くことは、殆ど無いと言っていいくらいの事なので。
会場(ゆうぽうと)に到着したら、ロビーが恐ろしいほど人がごった返していました。原因は公演パンフレットの売り場が、Tシャツ等のグッズ販売と一緒になっており、お客が殺到していてすんなり買えない状況...。 係員は沢山いるのに何とかせい!といきなり怒りテンション。誘導が不慣れなのは初日だからでしょうか。
私の席はセンターブロック中ほどのポジション。とても観やすかったですが、舞台左右にある字幕電光掲示板は、真ん中より後方席じゃないと、舞台と一緒には見難いと思います。 この作品は思ったよりセリフが多かったのですが、しっかり言葉全部を解らなくても案外ついていけますよ。 全体の印象は、軽妙で面白かった。ストーリーとか、心情などはそんなに気にしなくても、まぁ楽しめると思います。(てか、ストーリーはどうでもいい作品か?...) 場面場面で印象が変わるので、統一された纏まりは無かったですが、最初から最後までアダムと奥様サラのパーソナリティーと演技に心奪われました。
ジュニア・ドーラン役のアダムですが、これほど三枚目がハマるとは!! 実際、2幕目最後の劇中ダンス『十番街の殺人』は、カッコいいキャラを見せてくれるのですが、それ意外は、見事なコメディアンぶりを演じて笑わせてくれます。 特に1幕最後の劇中バレエ『ゼノビア王女』の絶妙な間合いや失敗キャラは、客席もかなり沸いていました。本来はこのような面をお持ちの方なのかも。 彼の歌は、音程などはしっかりしていました。声量がもう少しあれば良いのですが、舞台を重ねていくにつけ、更に良くなるのではないでしょうか。 それと、タップを踏むところは、さすがに素晴らしかったですよ。
ところで、アダムより感心したのはヴェラ・バロノワ役を演じたサラ・ウィルドーの舞台女優ぶり。とっても素晴らしかったですね!! 彼女がいたので、面白さ倍増したと言ってもいいくらいです。 ヴェラ・バロノワ役は、ロシア・バレエ団のプリマという設定。 ロシア訛りの英語を駆使して、エキセントリックなキャラを見事に演じ、とても楽しませてもらいました。踊りもちゃんとロシアのダンサー風になっていて、わざと誇張しているところも面白かったですね。 役の捉えて演じる能力は、思った以上に高い方。 ダンスもさすがにアダムとは踊り慣れていて、大変良かったと思います。 さすが! ロイヤル時代の可憐なイメージを思い返すと、このようなサラの姿を見る日がくるとは、思ってもみなかったなぁ。
元のこの作品は、作られてから70年ということで、音楽など「アメリカの古きよき時代」を思い出させます。私はけっこう古いミュージカル映画が好きなので、気持ちよく拝見出来ました。刺激とか強烈さはないですが、見ていて気分が良いんですね。 マシュー・ボーンの『白鳥の湖』のようなものを望んで行かれた方は、面食らうかもしれませんが...。
劇中、アダム演じるジュニアが、初めてヴェラと会う場面、ベッドにくつろぎながら、ヴェラがジュニアにあれこれ聞くところがあります。(ヴェラが誘惑しているところです)
ヴェラ:「胸が熱くなることある?」 ジュニア:「しょっちゅう」 ヴェラ:「私と同じね」 ヴェラ:「バレエはお好き?」 ジュニア:「もちろん!」 ヴェラ:「どんなものが?」 ジュニア:「白鳥の湖!! 」 ヴェラ:「白鳥の湖!どうして?」 ジュニア:「見たのはそれだけなんです...」
客はドッとうけてました! アダムといえば、『白鳥』? でも、このセリフのやり取りは、わざわざアダム版『OYT』に加えたものではなく、元々のこのミュージカルにあったセリフのようです。(マカロワ版も同じ) けっこうオリジナルと重なる部分が多いのかな? アダムのアイデアによるものと、昔の作品と比べたくなりました。
フランキー役(ジュニアの教え子で恋人?)を演じたアンナ=ジェーン・ケイシーは、容貌的に生徒というより、ちょっと年齢を感じてしまいました...。歌の多い役で、アダムとデュエットもあります。 昔のミュージカルで多く見られた発声風で、熱唱というよりその時代を匂わすような歌い方でした。存在感は、サラ演じたヴェラに負けていたかな?
歌の上手さで目立っていたのは、ペギー役(ロシア・バレエ団プロデューサー)を演じた、ジリアン・ビヴァン。声も、歌のアクセントやニュアンスも見事な歌いっぷりでした。歌の見せ場(聴かせどころ)は彼女のところかな。
コンスタンティン役(ロシア・バレエ団ダンサーでヴェラの相手役)を演じた、イヴァン・カヴァラッリは、いかにも見た目にはラテン系に見えて、ロシア人っぽいイメージではなかったです。 でも踊りの経験はたいしたもので、スカラ座バレエ学校とボリショイバレエ学校でダンスを学び、ミラノスカラ座、シュトゥトガルトバレエではプリンシパルを務め、振付もされるとの事。 『ゼノビア王女』の場面では、彼のクラシックバレエを見ることができますが、アダムが乱入し、ハチャメチャに...。 もう少したっぷり見たかったけれど、劇中劇の場面なので短くて残念です。 セリフも多くて、この役を演じるのは、彼なりにチャレンジだったのではないでしょうか。
(その他) ・ アンサンブルの方達は、まだ高レベルとまでは思えませんでした。無難にこなしているといった感じ。 音楽は、明るく耳なじみが良いのですが、特別良かった歌というものは思い当たりません。何回か聞けばもっと好きになるかも。
・ あと、パンフレットに「アンダースタディ」も載せてあって、へぇーと感心しました。
・ この話に登場するロシア・バレエ団はディアギレフ・バレエをイメージしているよう。エキゾチックな劇中バレエ「ゼノビア王女」はバレエ・リュス作品みたいですね。奴隷役は顔と身体に青いドーランを塗っていて、「青神」の挿絵を思い出しました。
TV宣伝のカッコいいアダムと、ジュニア役の三枚目アダムは別人だわ。 このような作品だったとは、宣伝見ただけじゃ想像出来なかった。 まぁ、私は面白かったので満足。最終日にもう一度観にいく予定です。
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