フーチーひとりごと。
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終電間際の電車の車内。まばらに空いた席にりそのまま目を閉じた。 向かいに女の人が座ってたような気がしたが疲れと眠さで確認する気力もなかった。その女性は泣いていた。確かにそんな気がした。目を開けて視線を上げるとうつむいたまま止まらない涙を拭く事もできない彼女がいた。
なんで泣いてるのかはわからないがここに座ったのは間違いだったかも。彼女は俺を気にすることなく泣いてる。止まらない涙には理由があるのだろう。おさまりかけてはまた泣き、おさまりかけては涙が溢れる。
不思議と気にはならなかった。とても自然にその光景を受け入れられた。俺にも同じことがあったから。彼女の理由と俺の理由は違うかも知れない。でも、俺も1度だけ電車の中で泣いたことがあった。
その恋はもう終わりだった。最後に会ったその日、俺は彼を失うことが死ぬほど辛かった。嫌いになって別れるんじゃない。嫌われて別れるんじゃない。彼は女性と結婚することを選んだ。俺はそれをとめる言葉を知らなかった。いや、知っていたけど絶対に言ってはいけない言葉だと思っていた。なにも言わなかった。
「ごめんな」って彼は言った。 たった4文字で俺の恋は終わった。「送って行くよ」と言う彼の言葉を遮って俺は二度とくる事のない、もう2人で歩くこともない道を駅まで歩いた。何も考えてなかったし、何も聞こえなかった。悔しかったし、悲しかった。
「涙は流さない」決めていたわけではなかったが涙はでなかった。電車に乗ってドアの向うに彼の住む町が見えた。「もう会えない」そう思った瞬間涙が一気に流れた。止まらない。上を向いても涙は流れ鼻水も流れる。拭いても拭いても止まらない涙。
周りの目なんて気にはならなかった。どう思われてたって今はそんなことに気を遣う余裕なんてない。 全神経、全感覚がひとつのことを思い感じてた。そして、俺は降りる予定のなかった次の駅で降りた。最後に彼の町を見たこの電車に乗っているのが辛かったから。この電車で帰るとほんとに終わってしまいそうな気がしたから。 駅のホームでベンチに座り落ち着くまでどれくらい時間がたっただろう。何本も電車が通り過ぎた。俺が泣こうが途中下車しようが終わった恋は元には戻らない。そんなことよくわかってたけど、どうしようもなかった。 流れる涙は誰のせいよ・・・。
だから俺は今、目の前の彼女の涙がとても自然に見えた。
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