トーキョー・ハッピーデイズ
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2000年12月23日(土)  X'mas Party

 例によって土曜出勤。
 祝日が土曜だなんて、許せない。
 私の休みを返せ!
 思わず来年のカレンダーをチェック。
 するとショッキングな事実が。
 5月5日、ゴールデンウィークのクライマックスともいえるこの日は土曜日。
 他にも9月15日。11月3日。
 なんてことだ。
 この不満はどこにぶつければいいんだろう。

 紺野くんも今日は仕事で、会えない。

 このイヤな発見を明子にメールで知らせたら、すぐに携帯が鳴った。
「今日出社してんの?」
「本日も通常営業しておりますー」
「私も。でも紺野くんとデートすんじゃないの?」
「あっちも仕事ー。どうも泊まりらしくてさ。もうイヤになるよね。世の中クリスマスなのに」
「じゃあ、映画でもどう?“オーロラの彼方へ”、見ようと思ってんだけど」
「行くー。何時にする?」
「7時20分の回があるから6時30分に新宿でどう?」
「OKOK。じゃ、6時30分にいつものとこで」

 “オーロラの彼方へ”。
 思ってたよりずっとよかった。
 子どもの時に父親を亡くして成長したニューヨークの警察官が、偶然無線で、生きている頃の父親と時を越えて交信できてしまう、という摩訶不思議な話。
 設定には驚いたけど、感動する。
 隣で明子が密かに涙を拭いていた。

 映画の後、映画館の近くにある焼き鳥の店に入った。
 いつものようにイタリアンレストランに行く気にはならなかった。
 きっとカップルだらけだと思って。
「ジュンはきっと紺野くんとデートだと思って、連絡しないつもりだったんだ」
「仕事はクリスマス関係ないからねー。あんまり私自身、盛り上がってないからいいんだけど」
「紺野くん、泊まりってことは、明日もダメなんだ?」
「たぶんね。先週もろくに休んでないし、かわいそうだよね」
「彼も忙しいんだねー」
「みたい。そういえば今月、ほとんどまともに顔合わせてないよ」
「あらあら。大丈夫なの?」
「うーん。まあ電話は結構まめにしてるからね」
「そっか。じゃあいいか」

 熱燗登場。
 お互いにお酌し合って、クリスマスに乾杯。
「ちょっとどうするー。日本酒だよ。こんな日に」
「ねー。そしてディナーは焼き鳥」
「相手は女だし」
「やばいかな」
「やばいよ」

「……結局どうすんの、名古屋の彼」
「実は先週ダメになった」
「え。そうなの?」
「うん。ちゃんと会って、話してきた」
「向こうから言われたの?」
「お互いにわかってたんだ。このままじゃダメだって。なんか結局もう気持ちも離れちゃってたし」
「……年も押し迫るこの時期に」
「しょーがないっしょ。来年に持ち越したくないしさ」
「それはそうだね」
「これでよかったんだよ」
 自分自身に納得させるようにつぶやいた明子の姿が、去年の自分とダブる。
 前の彼と別れて一人になった時、私は既にどうしようもないのにしばらく迷っていた。
 別れるという選択は正しかったのか。
 別れるべきではなかったんじゃないのか。

 私は努めて明るく言った。
「じゃあ、今日はオールいっちゃう?」
「マジで?」
「たまにはいいんじゃないの?」
「いいね。久しぶりにカラオケでも行っとく?」
「行っとこ行っとこ」
「もうね、来年はオールとかできないと思うよ。体力的に」
「ホント。今が限界だよね」

 飲んだ後、終電で明子とウチの近所のカラオケに向かう。
 山手線の電車から、新宿高島屋の前に並んだオーナメントの光が見えた。
 先月見たときはそれほど心を動かされなかったけど、今見るとやっぱりキレイ。
 紺野くんと一緒に見たいな。とちらりと思った。


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