トーキョー・ハッピーデイズ
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2004年04月27日(火)  最年少の座

 今週からうちの部にも小島くんという新入社員の男の子が一人やってきた。
 この部署で最後の新卒採用の新入社員が静ちゃんで、彼女だってもう5年目だから、かなり久しぶりだ。
 先週まで人事の研修を受けていたようで、3ヶ月間実戦で見習い。
 適性と本人の希望を加味してその後の配属は決定する。

 シャツはまぶしいくらいに白くぱりっとしてるし、靴はぴかぴかに磨かれている。
 スーツを毎日着る生活にいかにも慣れてないという感じ。
 スーツ生活○十年のおじ様たちのように、隠れキャラクターのネクタイ(普通のネクタイなのによーく見るとミッキーマウスのシルエットが連続しているデザイン、とか)で遊ぶ余裕なんかないし、非常にオーソドックスで無難な柄のネクタイをきっちりしめている。
 姿勢もよくて、返事もはっきりして、会社にいる間中、常に期待と不安で緊張し通しなのがわかる。
 とにかく何もかも初々しい。

 “あんなー時代もーあったねとー”と中島みゆきのフレーズが頭をよぎるあたり、私もかなり古くさい。
 気付けば私ももう7年? とにかく数えるのが面倒なくらい長くここにいる。
 これだけいれば、十分お局さん的要素があることは否定できないんだろう。
 少なくともこの部署のことは全て知り尽くしていると言っていいし、仕事上でわからないことというのはよほどイレギュラーじゃない限りは存在しない。
 なんと言っても来年は30なのだ。
 気持ちは変わらないつもりでいても、新入社員を目の当たりにすると、フレッシュ光線炸裂で(この表現自体どうかとも思うけど)、もはやそれがまぶしくて直視できないくらい違うところまで来てしまったなと自覚せざるをえない。

 新入社員の登場に一番戸惑っているのは、静ちゃんだった。
「22なんですよ。若いですよね。どうしよう」
 何がどうしようなのかちっともわからないけど、これまで最年少の座をキープしてきた彼女にとっては一大事らしかった。
 最年少たって、彼女だってもう25なんだし、長いこと一番下で楽しめたのは幸運だったってことを自覚すべきだ。
「昨日総務の新入社員の女の子を見たんですけどォ、肌がちょーキレイでつやつやしてるんですよ。ホント、やばいですよねェ」
 まだ充分若いよ、とお情けで言ってあげようと思ったのに、続けて彼女はこう言った。
「早くカレを炊きつけて結婚する気にさせないと。私もいき遅れちゃう」
 “も”?
 “も”って何。
「……ケンカ売ってる?」
「え? ちっがいますよ、浅井さんのこと言ったわけじゃないですよ」
 首を振る静ちゃんのあわてぶりが何より本音を語っている。
 ま、いいけどね。


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