きまぐれがき
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たぶんこの辺りの書店には置いてないだろうからと、Amazonに注文 していた河出書房新社のKAWADE夢ムックシリーズ先月発売の 「武田百合子」が届く。
おお〜表紙は富士山に登ったときのものではないかしら。 お召しになられているサマードレスは、ご自分で縫われたのでは なかったかしら。
須賀敦子も武田百合子の作品を読んでいると元気がもりもり沸いてくる、 というようなことを書いていらしたが、私も泣いたり笑い転げたりしな がら何度繰り返して読んだことだろう。
呼吸困難になって救急車を呼んだときには、ピポーピポーがだんだん 近づいてくる音を聴きながら、はうようにして本棚から百合子の本を 数冊引っ張り出してきてパジャマや洗面用具といっしょに紙袋にドサッ と入れた。その途端バタンとその場所にうずくまって動けなくなって しまったのだが、私のいるところにはいつも百合子、だったのだ。
このKAWADE夢ムックシリーズ「武田百合子」には、旅行記「犬が 星見た」で、旧ソ連圏の中央アジアの国々からソ連、北欧を訪ねて回られ た時の写真もずい分載っていて、どれも初めて見るものなので興味深い。 写真の中に、ご一緒に旅をされた錢高老人(錢高組の会長・当時)が写って いらっしゃらないかとしみじみ眺めてしまう。 錢高老人を見つめていく百合子の筆は絶品だった。 「犬が星見た」を読んでからしばらくは、株などにまったく関心のなかった 私が、買ったわけでもないのに錢高組の株価だけは気になって、新聞の 株式欄を見たりしたのだもの。
夢ムックシリーズのちょうど1年前は「森茉莉」だった。 お二人とも亡くなられてから何年も経つけれど、ひたひたと生き返って こられたとしても何の不思議もないように思う。
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