きまぐれがき
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時々読んでいる週刊新潮のある連載に、筆者がエール大学 に留学した時、神学部があり、大学の中で重要な地位をしめ ていることに驚いたというようなことが書いてあった。
これを読んでいるうちに、ふと遠い日のある光景が思い出され た。 祖父がエール大学で学んで数十年経った後に、再びエールを 訪ねて帰国したばかりの頃だったように思う。 記憶が曖昧ではあるけれど、どういうことからか中国の義和団 事件の話になった。 小学生の私はただ聞いているだけだったのだろうが、断片的に 覚えているなかで忘れられないのは「エールよ、エールよ」の言 葉だった。
中国に派遣された宣教師たちが殺されていくなか、エール大学 から派遣された一人の宣教師が息を引き取る間際に
「エールよ、エールよ、私はこの地で神に召されていくが、これに 臆することなく第二、第三の私をこの地に送って欲しい」
というようなことを、そばにあった紙片に書きつけた。 この紙片は人から人の手に渡り、海を越えて、これを書きしるし た宣教師の母校であるエール大学に届き、神学生たちは中国で の伝道の志をさらに強くしたという話だった。
この話をしながら祖父は、机の上にあったノートに「エールよ、 エールよ。。」と、宣教師が書き遺したという言葉を書いてくれた。 私は長いことその紙片を日記帳にはさんだり、手帳に書き写して みたりしながらも大切に持っていたのに、いつの間にかとうとう 紛失してしまったのだが。
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