きまぐれがき
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電車で隣り合わせた50男。 新聞の競馬欄を熱心に見てはマジックでチェックを入れていた 時はおとなしかった。 そのうちデパートの紙袋の中に両手を突っ込んでなにやら始め たので見てみると、ビニールに包まれた雑誌のビニールをギニ ーッと伸ばしながら破っているのだった。
やっとビニールを剥がせた雑誌を紙袋から取り出し、周りに何の 雑誌なのか気がつかせないようにうまく新聞の間に挟む慎重な 作業をし終えて、頁をめくり出した。 馬鹿だな。隣の私からは丸見えじゃないか。 もしかして、私に見せてくれてるわけ〜?
どの頁もどの頁も、同じような顔をした同じような体型のお姉さん が裸で横たわっている。 なんだつまんないの。 思いっきり横目で眺めて疲れた。
そのうちブツブツと独り言を言い出したのは、どうもお姉さんの 評価らしい。 同じように見えるお姉さんたちでも、その男から見たらそれぞれ 言いたいことがあるのだ。 そんなもん訊きたくない。 さいわいさぁ降りる駅だと、席をたったところ「さっきから覗きやが って」と文句を言われた。
「えっ?私覗いてた?横目を使っただけです」と言い返すことがで きなかったので、その代わりに「ふん!」と顎をつき出すようにして 急ぎ足で電車から降りた。 今日の外出は気分華やかだったのに、台無しだわ!
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