罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
『僕』は自由を欲している。
『彼』は過去に縛られたまま僕等を放そうとはしない。 彼の想いは彼が手を下さずとも僕等を容易く停滞させる。 …三ヶ月。 『彼』の説得は不可能だった。 感情に巻き込まれ押し流されるのを止めるだけで精一杯。 僕等が本来最も為りたくなかった『人形』にすら為れなかった。 暴走して発狂するか、あの家から逃げ出す事しか出来なかった。
僕は弱かった。 『人形』である事も 『普通』でいる事も 『自由』に為る事も選べなかった。
思えば誰だって雁字搦めの『ウンメイ』とか云う奴に縛られている。 ヒトはその雁字搦めの中動ける範囲でもがくしかないのかもしれない。 でも僕は何の為にこの蜘蛛の巣でもがいている?
ちっぽけな『キボウ』にまだ縋ってるのかもしれない。 『ツタエル』人間がまだ居るのかもしれない。 でも、少なくともそれは『彼』のように『コワス』為じゃない。 どんなに最低でも人間が『キライ』になれない。 いいとこあるって信じてたいから…
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