年始から春にかけて、 我が家の食卓には黒豆の甘煮があがる。 おばあちゃんが数日かけて釜のような大鍋で ちょっとずつ火加減をしながら煮込んだものだ。 おかあさんとおじいちゃんの好物で、 のどが荒れたときには煮つゆを飲むとばっちり効く。 おすそわけしたレシピも大人気の、おばあちゃんの渾身の一品。
年末、こだわりの丹波の黒豆を買いに、築地市場に行くのが恒例で、 去年おととしと私は荷物持ちでおともしている。 おじいちゃんにもらった一眼レフをぶら下げて。 大きなリュックサックを背負って。 黒豆はここ、と決めたお店で買ったものしか使わない。 おばあちゃんが品定めをする間は、 少し人ごみから離れたところでシャッターを切りながら待つ。 フォークリフトのアームがないような乗り物をパシャ。 段ボールに投げ込まれた食べ物をパシャ。 古くからの商店をパシャ。 ついでにおばあちゃんの真剣な横顔も。 豆のあとはお茶や明太子を買って、 重くて崩れても問題のないものは 私のリュックにどんどん詰め込まれていく。
お昼を場外のお寿司屋さんで食べて、 帰りは卵焼きをつまみ食い。 おばあちゃんはテリー伊藤のところじゃなく、 そのお隣の卵焼き屋さんがお気に入り。
|
|