11月にはいって、やっとお酒の味がのってきました。
近頃は8月末くらいから「ひやおろし」の商品案内がはじまりますが、ほんとに熟成して味わいに幅がでるのは、10月後半から11月にかけてだと、個人的には思っています。
9月というのは日本酒が最も売れない月のひとつなので、販売戦略上、「ひやおろし」という季節限定商品を投入し、すこしでも市場を活性化させねばならないのはわかるのですが、いかんせん9月では若過ぎます。
ほろよいも毎年出荷時期を迷うのですが、10月半ばくらいから出荷しはじめます。
でも、そこそこ回転しているなあと思うのは11月にはいってからで、近頃の消費者さんは、よくわかっていらっしゃるなあと感じます。
11月に入り気温も下がり、鍋物が恋しくなります(TVCMでやたらにシチューのコマーシャルがはいるのも10月、11月ですね)。あつあつの鍋物と、あじの乗ったキレのよい辛口の「ひやおろし」は晩秋の醍醐味といってよいでしょう。
美味しい秋の食材がはいったときにぜひお試しください。
できれば、そんな暖かい御家庭の食卓風景を、竹生嶋のボトルと一緒に写真にとっていただき、「竹生嶋で乾杯キャンペーン」に御応募いただきますとありがたく思います。
JAマキノ町の感謝祭がありました。
マキノ町内の愛飲家のみなさんは、弊社の売上の基礎票のような存在で、特に「役場」「郵便」「消防団」「農協」「漁協」関係の面々は、ゆめゆめ粗相のないようにお付き合いせねばなりません。
というわけで、恒例のこのイベントには、ほろよいの蔵は簡単な「きき酒コーナー」を設けさせていただいています。
「金紋」「銀紋」「特選金紋」「ひやおろし」「本醸造原酒」「純米酒」の6種類のお酒と、1から6の数字をふったビンのお酒とを、きき酒してマッチングしてもらうという内容です。
無濾過でけっこう色の濃いものと、活性炭でろ過して出荷しているものを半々ずつ出しているので、真剣にきけば、素人さんでも少なくとも4点は正解する位の、ごく簡単なサービス問題です。
野菜の特売や、もちまきなど楽し催しや、、イベントにかかせないタコヤキや焼きソバ、大判焼きなどの屋台もあって、町内の奥さん連もたくさんおいでになり、けっこう、きき酒競技にも参加されます。
飲酒運転の罰則強化もあり、色と香りだけで回答される方も、かなりおられました(むかしはじっくり口にいれて飲みほされ、競技なのか、お酒を楽しんでいらっしゃるのか、わからないようおじさんたちがけっこういらっしゃいましたが)。
東京出張やら、ネットで情報発信するのも必要なことなのですが、やはり地元で愛着をもっていただくことが一番大切なことなのだなあと、毎年ほろよいに教えてくれる大切なイベントです。
蔵人さんが蔵入りし、お掃除がはじまり、仕込みが近づくと、いろんなものが必要になります。
仕込み蔵の床や醸造器具を洗浄する消毒剤、浄水器の活性炭(家庭用の百何倍もあるドラム缶のような浄水器を御想像ください)、たわし、ささらなどの消耗品。
醸造協会からは協会酵母のアンプル。もやし屋(麹菌を販売している会社です)さんからは、酒母用やもろみ用の「種もやし」。酵母を活性化するための培地も本日届きました。
もちろん、酒造用玄米の仕入れや、精米工場の申し込みも、はじまっています。
取引先の銀行とは、酒造資金融資のための最終的な手続きの段階です。
仕込み管理用のいろんな報告書の用紙や帳簿も整えねばなりません。
蔵人さんたちの、朝昼晩の食事も、給食屋さんや近くの仕出しやさんから届きはじめました。
吹けば飛ぶような零細蔵元とはいえ、春夏秋と休眠していた酒蔵が、きしみを上げながら目覚め、活気を帯び、稼動を始めました。
いよいよ酒造りの準備が始まりました。
朝から蔵人さんたちは、仕込み蔵からいろんな道具を持ち出し、熱湯で消毒しブラシをかけて洗浄しています。
お米の蒸しを取る麻布も何枚も洗い、湖岸に作った物干しに干しました。
お米も11月1日に65%に精米した玉栄が39袋到着し、明日には掛米に使う加工用米も到着します。酒母をたてる準備がどんどん進んでいます。
12月15日前後の新酒発売にむけ、蔵も臨戦体制です。
2003年11月01日(土) |
パソコンがやってきた。 |
6年前に導入したウィンドウズ95のマシンが老朽化し、マイクロソフトのサポートもとうになくなってしまったので、思い切ってXPのマシンに更新しました。
「同じ95のマシンを使っていた会社が、ある日スイッチをいれたとたんに変な音がしてダウンしていしまった。」などというお話を出入りの税理士事務所の方から聞いたものですから、伝票入力担当の奥方も今回は乗り気です。
このコンピューターでは、主に販売管理と財務管理をしていたのですが、それだけでは能力が余り過ぎ、ムダに思えましたので、全国の電話辞書を搭載したコンビニ決済が可能な産直関係のソフトも一緒に運用することにしました(全国の電話帳がハードディスクに入っていて、お客様の電話番号が電話帳にのっていれば、電話番号をお聞きするだけで、たちまちのうちに世帯主の名前と住所が表示されるというすぐれものです)。
ところが、産直のソフト屋さんはあんまりいい顔はしません。会計関係のソフトと産直のソフトが干渉しあって、正常に機能しないかもしれないとのたまうのです。
こんなにメモリーが大容量化し、マイクロプロセッサーが高機能化しているのに、ソフトの相性が悪いと、コンピューターの中で共存できないというのは、ほろよいから見るとブラックユーモアーとしか写りません。
会計ソフトの担当の方と産直ソフトの担当の方、相互に連絡をとってもらい、技術的な打ち合わせをしていただき、「どうやら大丈夫でしょうが100%保証はできません。両方のデータのバックアップをとって実際に運用してみましょう」との答えがかえってまいりました。
なんともはや、パソコンの意外な弱点を知ってしまったほろよいでした。
きのう能登の西尾杜氏から電話があり、11月3日、昼過ぎに蔵入りするとの事でした。
先勝の蔵入りです(杜氏さんは、たいてい日を選びます)。
すでに、仕込蔵や製麹室の掃除がはじまっており、春夏秋と生酒の倉庫として使用してきた酒母室の商品在庫の移動など、小林君と早藤君は大車輪の活躍です。
ほろよいは酒造計画の立案で頭を悩ませています。
9月末で商品在庫をチェックしたところ、レギュラー清酒の在庫が多めで、今年はかなり減らさねばなりません。純米吟醸や吟醸も、商品によっては、少し売れ行きがにぶいので、これも調整しなくてはなりません。
案の定、今年も県産好適米の質が良くなく(収穫後の乾燥時の人為的なミスで胴割れを出すなど、去年の反省がまったく生かされていない)、玉栄は特等が全然なくて主に1等で県内蔵元に供給されるそうですが、注文数量の30%は半ば強制的に2等が割り当てられるそうです。
その割には、仮払価格が1俵で2千円以上も値上がりしているのはどういうわけでしょうか(100俵買ったら去年より20万も多く払わねばならなくなります)。「ユーザーである酒造業者の現在の経営環境をまったく考えず、質が悪いのに、値上げをする」こういう売り手の感覚がよくわかりません。
思い切って在庫整理をするつもりで減産することにしました。ただ、地元農家との契約栽培で収穫したお米でつくったお酒は、今年も新しい展開を考えています。
徳島県山田錦などは、ちゃんとユーザーのことを考え、本年の米の品質も勘案して、よく考えた仮払価格を今年は提示されておられます。
農家の経営状態については理解しているつもりですが、「自分の都合ばかり考えて栽培した」好適米とはいいかねる品質のお米を、地米だからといって積極的に買おうとはどうしても思えないのです。
こんなことをやっていると、酒質勝負の蔵元は、県内外の優良な栽培農家との直接取引きの比率をどんどん増やしていくに違いありません。
酒や米や薬など、これまでお上に管理保護されてきたギョーカイというのは、いつになったら風通しがよくなるのでしょうかねえ。
「どぶろく特区」なるものが巷を賑わせています。
民宿を経営している農家が自家製の「どぶろく」を製造して、宿泊したお客さんに提供したいのだけれども、現行の酒税法では「どぶろく」は「雑酒(清酒ではない)」のカテゴリーに属しており、年間最低6000リットル製造しなければならないので、到底農家の片手間で造ることができない。
酒税法を改正して全国一斉に「どぶろく」の最低製造量の規制をゆるめられないなら、構造改革特区として「どぶろく特区」に指定してもらい、その地域内だけでも最低生産量を少なくできないかというのが「特区」推進派の考え方です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ これに対する、前財務大臣の塩川さんの見解は以下の通りです 塩川財務大臣閣議後記者会見の概要(平成15年2月21日(金)/財務省ホームページより抜粋) 問)総理が熱心だと思うんですけれども、構造改革特区の関係で「どぶろく」を特区として認めたらどうかというようなことがあるんですが、これについては大臣はどのように思われますか。
答)まあ、これはもう僕は、すぐにですね、開放すると言っとんです。今、あれでしょう、主税局のほうも党のほうと調整して、大体そういう方向になってる。田舎の人の楽しみだからな、1つはな。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ところが、財務省から出てきた「どぶろく特区」実現のための条件は以下のとおりで、下にほろよいが解説をつけました (1)酒税負担の減免はしない (解説)1リットルあたり98.6円(アルコール分13%未満)、12%を超え1%増すごとに8.22円が加わります。
(2)どぶろくの毎月の納税申告や製造販売の記帳を確実に行う (解説)仮に日本酒と同等の記帳を義務付けられるとしたら、1つの仕込みごとに使用した白米の量、水の量、麹の量、出来上がった「どぶろく」の数量とアルコール分を分析して記録します。 また、「どぶろく」の発酵に使う容器(現実にはポリバケツか梅干に使うカメになるのでしょうが)は、1個ずつ実測検定し、容器の上端から2ミリきざみで、空寸と実容量の対照表をつくらねばならないでしょう。 できあがった「どぶろく」を何月何日に何リットルお客様に提供し消費されたか記録し、月ごとに集計、翌月に消費リットル数と算出した酒税報告書を所轄税務署に提出、翌々月にその税額を納付することになります。 もし、万が一雑菌が混ざってどぶろくが呑めなくなったら、所轄税務署に連絡し、廃棄の記録をつけねばなりません。 もしかしたら、数年に一度は税務署から記帳が完全であるか検査においでになるかもしれません。
(3)酒税納税の確かな担保がある ちゃんと酒税がはらえるか、経営状態などのチェックがはいりますが、年間1000リットル造っても(アルコール分13%未満ならば)支払う酒税は98.600円程度なので、これは比較的簡単にクリアできるでしょう。
(4)不適格業者を防ぐため、他の免許の要件を満たしている これは「他の免許の用件」がなにを指しているのかわからないので、何のことやらわかりません。きちんと「酒税がはらえる業者」であることを求めているのだと思います。
(5)どぶろくは特区内で消費し、特区の趣旨に合うものにする これがくせもので、たとえば民宿で「どぶろく」が気に入って、おみやげにもってかえろうとしても、ビン詰めして持ち帰ることができないということになります。
ほかにも「自分が農家として生産したお米をつかって自分のところで仕込む(ということは、農家でない民宿はどぶろくが造れない)」「自分の民宿に宿泊したお客様の飲用にのみ提供する(びん詰めして販売できない)」という、所期の目的以外の使用はできない条件がつくでしょうし、なによりもまず雑酒の製造免許をもらうためには、いやになるほど何枚も書類を出さないといけないでしょう。 所轄税務署も初めてのことですから、おそらく国税局かその上にまで実務上のやりとりがあるでしょうから、そんなにスムーズに実現する話ではないように思います。 民間と政治家の斬新な発想に対する、官のスムーズで柔軟な対応がもとめられています。「日本を活性化させたい」とみんなが思っているのですから、協力しあってよい「どぶろく特区」を造ってもらいたいものです。
ちなみに、ほろよいは「どぶろく」解禁派です。ちゃんと酒税をはらって美味しい「どぶろく」をつくれば、まずい「パック酒」や「経済酒」は排除されるでしょうから。口の肥えた消費者さんが増えたほうが、地酒屋としてはよい環境だと思っています。 素人には負けないぞという自負もありますしね。
|