このお教室にきてから、 ずっとアレンジや作曲が大好きだった発達障害児のSくん。 今回お教室のお友達から「Sくんと連弾がしたい!」とラブコールをもらい、 自作の連弾曲をクリスマス会で演奏することになりました。
以前この子が作る面白い曲について日記に書きましたが、 あの頃は調性感がなく、 シルク・ド・ソレイユが使うような不思議な曲ばかりでした。 これはこれで雰囲気があり、私は大好きだったのですが、 やはり今後のことを考えると調性も必要かな・・・と。
ということで、1年ほど前オルガンピアノの教材にある、 「かざぐるま」という曲を、 彼の目の前で半音ごとに移調して弾いてみせました。 案の定、面白い!と思ってくれたようです。 彼にとっては、 「こんな面白い遊びがあったのか!」という感覚だったのでしょう。 もともと耳がいいので、教える必要もなく、 こういう遊びがあるとわかったら、 自分から音を探して、どんどん弾くようになりました。
いつの間にやら調号までどこかで覚えてきて、 作曲する際に「♯3つ!」などと、 楽譜に書き写す私に言うようになりました。 調名を教えてはいるのですが、 数そのものに興味がある彼にとっては、 ♯や♭の数だけで把握するほうがよいようです。
あれから1年。 この子のセンスをつぶさずに伸ばしていくには、 どういうレッスンがいいかな・・・と常に考えながらのレッスンでした。 ここ1年は移調して遊んだり、 いろんなハーモニーに即興演奏を加えて遊んだり・・・。 少しでも多くの素材を提供していこうと思ってきました。 また、素材を提供すると同時に、 ピアノ演奏の技術を高めることで、 それが作曲に生きてくるだろうという思いから、 様々な音の動きをオルガンピアノを中心に取り入れてきました。
オルガンピアノで「こいつは面白い!」という動きに出会うと、 その音の動きをすぐに作曲に使ったり、 一緒にレッスンしていて本当に面白いです。 作曲者名のはっきりしていない教材曲は、 一度楽譜どおりに弾いたあと、アレンジ可にしてあります。 彼がたった1音足すだけで、音楽が立体的になり、 つまらない教材曲に色が出てきます。 これは、本当にすごい! こんなところにこんなハーモニーが隠れてたの?とびっくりします。
こんな風にここ1年レッスンを進めてきて、 今回のTちゃんの連弾がしたい!というラブコール。 自作の曲での連弾ならいい、というSくんの意思を受け、 早速作曲に取り組んでもらいました。 1回目のレッスン・・・・。 2回目のレッスン・・・・。 3回目のレッスン・・・・。 なかなか曲が終わりません。(笑) こんな長い曲、彼にとっては初めてのこと。 頭の中ではTちゃんの音と自分の音が同時に鳴っています。 私は2パート分書き取らねばならないので、いつもより大変。( ̄▽ ̄;) 「ちょっとまってまって。こうでいいの?」 といちいち確認しながらの書き取り作業です。
で、やっと終わりました〜。 今日その楽譜をTちゃんにも読みやすいように、 楽譜制作ソフトに打ち込み印刷しました。 きっと彼のことだから、これでは終わらずに、 音が足されていくのだろうな〜とは思いますが、 その経緯はTちゃんにとってもよい経験になるだろうと思います。
そして、今回の作業で今後の彼の目標が見えてきました。 今回の曲、発想はとてもすばらしいのですが、 素材が素材で終わってしまっているのです。 これはどういうことかというと、構成感が全くなく、 思いつきのまま次々に音楽が変わっていく・・・ということです。 具体的にどんな感じかというと、 最初から最後まで全部がサビ、といった感じです。(笑)
8小節くらいのすばらしい素材を思いついたかと思うと、 次にはもう全く異質の素材が来る、という曲なのです。(笑) では、今後どのようにこれを改善していくか・・。 これが私の今後のレッスンのテーマです。
まずは、思いついたすばらしい素材を、 どんどん発展させていく・・・という遊びを提供しようかなぁ・・・。 実は今回1つだけある素材を発展させているのです。 それはそれはすばらしい発展のさせ方で曲が終わっています。 作曲には一切口出ししない私ですが、 今回あまりにも次々に新しい素材が出てきて、 いっこうに曲が終わりそうになかったので(笑)、 とうとう「もうそろそろこの曲終わりにしようよぉ〜」と。(^-^; そのときあまりにもまとまりのない曲になっていたので、 「最後は最初のフレーズにして終わろう。」と声かけしました。
そのとき作ってくれたコーダが、 最初のものとすっかり同じではない、 4小節おきに転調していく・・・というものだったのでした。 転調へ向かうメロディにするため、 メロディの流れも冒頭とは多少異なっていますし、 加えてあるハーモニーも違うものになっています。
そう。考えてみれば、彼の作曲は「アレンジ」から入ったのだった。 ということは、素材を発展させることそのものが、 彼にとっては楽しいことであり、得意分野でもあるわけで。 いまさらそれに気づくなんて!( ̄▽ ̄;) 果たしてこの発展ゲームに彼が興味を示してくれるか? そしてそのゲームで身につけたことを、 作曲で発揮してくれるか・・・・。 クリスマス会後のレッスンが楽しみだなぁ〜〜♪
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