読み終えました。草枕。 正直最初のうち何がなんだかわかりませんでした。 今まで体験したことのない世界だったので。 3分の1くらい読み進めるまでは、 「とにかく読み始めちゃったんだし。」という義務感。 1ページ1ページがなかなか進みません。(_ _;)
ところが途中からどんどん面白くなってきて、 昨日の夜などは寝るのも惜しく、 最後まで読まないと気の済まない状態に。 もともと「美しい日本語の響き」を求めて購入した本ですが、 私の求めていた美しさは表面的なもの。 この本が与えてくれた美しさは、 もっと深みのある味わいのあるものでした。
この本の言葉たちは、 絵では表現しにくいものを表現していたように思います。 もちろん絵画的な美しさもあるのですが、 そういった情景に身を置いたときの、 心的状態を表した言葉が非常に豊かなのです。
この本は、きっと私の感性を豊かにしてくれる。 私の表現力を高めてくれる。 最後まで読んだからといってそれでお仕舞いにはしたくない。 主人公がやっているように、 非人情な読み方をして、細く長く付き合っていこう。
『「全くです。画工だから、小説なんか初から仕舞まで読む必要はないんです。けれども、どこを読んでも面白いのです。あなたと話をするのも面白い。ここへ逗留しているうちは毎日話をしたい位です。何ならあなたに惚れ込んでもいい。そうなると猶面白い。然しいくら惚れてもあなたと夫婦になる必要はないんです。惚れて夫婦になる必要があるうちは、小説を初から仕舞まで読む必要があるんです」 「すると不人情な惚れ方をするのが画工なんですね」 「不人情じゃありません。非人情な惚れ方をするんです。小説も非人情で読むから、筋なんかどうでもいいんです。こうして、御籤(おみくじ)を引くように、ぱっと開けて、開いた所を、漫然と読んでるのが面白いんです」』
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