想い出の樹

2005年03月08日(火) 言葉の奥深さ

読み終えました。草枕。
正直最初のうち何がなんだかわかりませんでした。
今まで体験したことのない世界だったので。
3分の1くらい読み進めるまでは、
「とにかく読み始めちゃったんだし。」という義務感。
1ページ1ページがなかなか進みません。(_ _;)

ところが途中からどんどん面白くなってきて、
昨日の夜などは寝るのも惜しく、
最後まで読まないと気の済まない状態に。
もともと「美しい日本語の響き」を求めて購入した本ですが、
私の求めていた美しさは表面的なもの。
この本が与えてくれた美しさは、
もっと深みのある味わいのあるものでした。

この本の言葉たちは、
絵では表現しにくいものを表現していたように思います。
もちろん絵画的な美しさもあるのですが、
そういった情景に身を置いたときの、
心的状態を表した言葉が非常に豊かなのです。

この本は、きっと私の感性を豊かにしてくれる。
私の表現力を高めてくれる。
最後まで読んだからといってそれでお仕舞いにはしたくない。
主人公がやっているように、
非人情な読み方をして、細く長く付き合っていこう。

『「全くです。画工だから、小説なんか初から仕舞まで読む必要はないんです。けれども、どこを読んでも面白いのです。あなたと話をするのも面白い。ここへ逗留しているうちは毎日話をしたい位です。何ならあなたに惚れ込んでもいい。そうなると猶面白い。然しいくら惚れてもあなたと夫婦になる必要はないんです。惚れて夫婦になる必要があるうちは、小説を初から仕舞まで読む必要があるんです」
「すると不人情な惚れ方をするのが画工なんですね」
「不人情じゃありません。非人情な惚れ方をするんです。小説も非人情で読むから、筋なんかどうでもいいんです。こうして、御籤(おみくじ)を引くように、ぱっと開けて、開いた所を、漫然と読んでるのが面白いんです」』


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中嶋 [HOMEPAGE]

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