NORI-☆
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謙虚になる秋--若年性○○の恐怖
最近、「うっかりミス」を頻発して自己嫌悪に陥っている。 日曜の朝、家族で出かけるときのこと、定刻までに目的地に着かなければならないので、慌しく準備してバタバタと家を出た。マンションの外廊下を歩いているとき、なんとなく違和感を感じながらも何が変なのかわからず、エレベーターで1階に降りてロビーを出ようとした瞬間、ハッ!と気がついた。 左足がこげ茶のローファー、右足が茶系のパンプス、靴がいわゆる"片ちんば"だったのである!! 「あっ!!」と叫んだ瞬間夫が振り返ったので、事情説明のため無言で足元を指差して「ごめん、先行ってて!」と踵を返した。一瞬で納得した夫の呆れ顔が脳裏に焼き付いている。 こんなベタなギャグみたいな失敗をやらかすなんて信じられないよ〜もう情けないったら…。昔会社の後輩が同じことをやらかして、通勤途中で靴を買ったために遅刻したことがあり、なんて間抜け、いったいどーやったらそんな間違いができるわけ?と笑ったことを覚えているが、どうもこうもない、やるときはやるのだということが、身をもってわかった。 靴を履き替え小走りに家族に追いつき、電車に乗って出かけた。乗換え駅の改札を出ると、サトシが叫んだ。「ママ、定期!定期取って!」 「え?定期?取ったよ。ほら…」一度かばんに納めた定期入れを出してサトシに見せようとすると、あるべき場所に定期が入っていない。「あれ??」重ねて入れているバスカードなどの下も見てみたが、やはりない。そういえば、"キップヲ オトリクダサイ"という改札機の声を聞いたような気もするけど…でも、確かに定期を取って定期入れに入れてバッグにしまう動作をしたではないか?なぜ? 混乱しつつ、とりあえず振り返ると、私が通った改札からすでに次の人が出て来ている。連れを待って立ち止まっているその人に声をかけ一応確かめるが、彼の手にあるのは私の定期ではない。では、私の定期はどこ??? すると、駅員さんが「取り忘れですか?」と言いながら歩いてきて、改札機の横の小さな扉を開けて、中にポツンと入っていた定期券を取り出してくれた。「時間経つとここに落ちるんですよ。取り違いを防ぐためにね」と渡してくれるのを、上の空でお礼を言いながら受け取った。 なぜ?どうして?が渦巻く頭でぼんやりしている私に、夫がまたも呆れた顔で振り返る。「大丈夫か?今日なんか変だぞ、気をつけたほうがいいよ」 幸いその日はそれ以上のミスは犯さなかったが、私は大いに落ち込んだ。 この手のギャグみたいなベタなミスは、今日に始まったことではない。ここ半月の間に頻発しているのである。 夕食の用意をしていて、ご飯茶碗にお味噌汁を注いで出したこと1回。朝、わざわざマグカップを出してきて、子供の麦茶用のコップになみなみと熱いコーヒーを注いだこと1回。その他にも、明らかにこれをしようと思って立ち上がったのに、全然別のことをして戻ってきてみたり(しかもその別のことはその場では必要のないことだったりする)、物を取り違えたりということが何度もあった。 人間誰しも間違うこともあるし、ぼんやりして失敗することもある。天然系とされている友人などは、しょっちゅうそういうミスを繰り返して笑いを取っている。 しかし、私はそんなとき常に、笑いながら内心、笑い話じゃ済まないだろうと突っ込んだり、何で失敗に学ばないのかなぁ…と呆れたり、あまりに"お約束"なミスに対しては「ウケ狙いでやってんとちがう?」なんて思ったりする側に立っていた。 普段の、いやこれまでの私は、ケアレスミスをあまりしない、注意深く先読みをして動くタイプの、信頼性の高い行動者として知られるキャラクターだったのだ。 もちろん、全然ミスをしないということではない、いや過去には色々やっているけれど、何というか、頻度が違うというか、ミスってもそれで決定的に恥をかく前に自己フォローをする機転と器用さを持っているという自負はある。ゆえに、そういうミスは非常に恥ずかしい、という意識があるので、よけい自分が不注意な人間の側になってしまったことが堪えるのだった。 これら一連のボケの話をすると、会社の同僚たちには「えー、らしくないですね」「NORIさんでもそういうことするんだ〜」と言われた。そう、私も意外でしかもそれが笑えないくらい続いているから落ち込んでいるのだ。 また、母に話すと「疲れているのよ」「忙しすぎるんじゃない?大丈夫?」「すこしのんびり休みなさい」などと労わってくれる。うーん…バタバタしてるっていうのは確かだけど、でもそれはいつものことで、ここ半月急にということでもないんだけど。 単に疲れているから注意が散漫になっている、慌しいから一つ一つの動作確認がおろそかだ、ということならいいのだけれど。また、ミスしたとき、明らかにぼんやりしていた、と自分でも思えるのならまだしも、意識はとてもハッキリしていて、こうするつもりと明確なイメージがあるのに、違うことをしてしまう、というところに得体の知れない恐怖を覚えるのだ。これが一過性のものでなかったとしたら?どんどん酷くなっていったとしたら?もしかして、何か脳の障害だったら?……と思うと恐ろしくなる。 「若年性痴呆症とかだったらどうしよう?」と母に言うと、「若くて体力あると、介護も大変だからって嫌がられるのよ」とつれない返事。冗談になってないじゃん! と一瞬とっても暗い気持ちになったが、「なに、私なんかそういう間違いはしょっちゅうよ」と笑う母を見ていると、まあそうかも知れないと思う。この程度はまだ普通、笑っていい範囲なのだろう、と思うことにした。 結局、これらのミスは、反射神経が鈍くなって、思考と行動との間にタイムラグができるようになった結果なのだろうから、やはりそれなりに歳をとって衰えてきているということなのだろう。 いずれにしても、こんなベタなミスで人に笑われる身になって初めて、ミスの多い友人も、決してウケ狙いでわざとやっているわけではなかったのだということがわかったことは、ちょっとした収穫(?)である。 ボケキャラに成り下がった(と思うところがやっぱりまだ傲慢なんだけど)私の、2003年下半期のスローガンは、 「謙虚」 「人に優しく」 新しいマイナス属性を一つ加えて、ちょっと大人になった秋である。
2003年10月21日(火)
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