「だから、明日までずっと一緒にいさせてください」
勇気、とか必要なかった。
全てが彼で、全てを捧げてもいい、なんて現実はそんなに簡単にいくわけないんだけど、確かにその時そう思っていた私は、声がうわずることもなく、淡々と、どちらかと言えば低めのトーンで、そう言っていた。
この状況に舞い上がって、テンションが高くなって、こんなことを言っているわけじゃないってことに気づいたのかどうかわからないのだけど、彼は驚く風もなく、私と同じように、落ち着いた感じで、軽く頷いた。
「わかった」 と。
三年前は弟がいて何も起こらなかった彼のアパート。 私たちはタイムスリップするかのように、もう一度、その場所に向かっていた。
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