カフェの住人...

 

 

第五話 〜あたたかい香り〜 - 2003年07月20日(日)


つるつると彼女の手が、私の腕の上ですべっていく。

そして、しゅるりとその手が私の指先から抜けると

私の中の重たかったものも一緒に流れ出す。


ほのかな香り

やわらかい手

あたたかな声


そんな毛布の様なものに全身が包まれ、私に安らぎが訪れる。



彼女はアロマセラピスト。

100%ピュアな植物のオイルと、とっても仲良しだ。

いつもの色んな小瓶が入ったポーチを取り出せば


「この人には、この香りのものと

 元気になれる、こんなものをいれようかしら」


そう言いながら、いつの間にやら

受け手の ‘気持ちよくなれる魔法のオイル’ を作っている。

そして、そのオイルでやさしく私達の肌をトリートメントしてくれる。

そのとき、彼女自身のぬくもりも合い重なり

肌を通り抜け、まるで体の奥の方まで染み込んでいく感じがするのだ。



彼女がここに一番初めに来た時、

他の住人達がそれを受けると

「なんだか不思議な感じだったよ」

と、口々に言った。

ただのアロママッサージなんじゃないの?

なんて私も初めは思っていた。

ところが、そうではなかった。



それからは言うまでも無く、

彼女はここの住人。



もちろん相性もあるだろう。

そんなもの必要ない人だっているだろう。

けれど、その彼女の人柄はオイルに負けないくらい

ふんわりと私達を包んでくれる。


毛布って、なんだか小さい頃大好きだったと思いませんか?

あったかい子供の味方。

寂しい時や、泣いちゃった時

毛布を引きずり出してきては、涙でくしょくしょにしたっけ。


なんだか

そんな感じの人なんです。


私は子供の様に包まります。

時にはいい香りのする毛布に包まれてみるのもいいものですよ・・・













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