縁側日記  林帯刀





2005年08月16日(火)  掬う。




「朝露 ひと握り」


雨戸を戸袋に押しこんで
障子はそのまま開けておく
一晩の空気が
流れ出すのを見ながら
しけたような薄がけをたたむ
朝の蝉は
まだどこか寝ぼけていて
昼間ほどやかましくない
近くを通る国道からも
トラックの音は聞こえてこない
軒下には簾が下がっている
僕が仕事に行っている間に
じいさんがつけてくれた
竹の簾

受けたやさしさを
かきあつめて
目の前に並べられたら
言い訳なんてできやしない
覚えているのが
ほんのひと握り
ひとつまみであっても
恥じたりはしない
でも
僕はそれを両手ですくっているだろうか
ちゃんと
飲みこめているだろうか

物干し竿の、カンッという音
ばあちゃんが
洗濯を干してるんだ
きっと暑くなる
風呂の掃除を思い出して
階段を下りていく

これから先
僕はどれだけやさしくなれるだろう
すくいあげる
あふれて落ちる
まるで朝露



                       二〇〇三 夏




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