…今日は貴方の誕生日ですね。
聞こえていますか。 “其処”は寒くないですか。
覚えてます? 昨年の貴方の誕生日。 好きなケーキを教えて下さいと僕が言うと、 それはもう、貴方は考え付く限りの色んなケーキを指折り数えて、 その後、「全部食べたいっ!」と叫びましたね。 そんなにたくさん食べたら、料理が入らなくなりますよ、と言ったら。 「…じゃあ、チョコレートの」 不満そうに言った貴方に、僕は思わず笑ってしまったりして。
だってあの時は、大丈夫だと思っていたんです。 そんなに焦らなくたって。いつだって、僕は貴方と一緒のつもりだったから。 来年も、その次も。そのずっと後も。未来はぜんぶ。 年が明けて、貴方の誕生日を祝って、貴方に僕の誕生日を祝って貰って。 その繰り返しのつもりだったから。
ね、悟空。 聞こえていますか。 “其処”は寒くないですか。
今日は悟空の誕生日ですね。 僕の想いが、記憶の無い貴方にまで、届けば良いのだけれど。 …生憎、そうもいかないみたいだから。 貴方を傷つける為の腕を伸ばしながら、想わせて下さい。 今の貴方も僕はとても好きですよ。 とても好きだけれど、やっぱり僕には。 心から笑って、怒って、僕を抱き締めてくれる貴方が好きだなぁ。
…悟空。 悟空。
僕の記憶も無くなるその前に。
貴方の名前を呼んでおきたい。
ありったけの力で。
ね、悟空。
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本誌で望まぬ戦いを繰り広げる二人を見て、 それでも悟空を助けたかった、八戒さんの想いを感じて、 辛くて、悲しくて、朱之はそれはもう泣きそうになってます。 本誌では、本当は誕生日なんて祝ってる場合じゃないって分かってるけど。 それでも祝わせて下さい。 本当は、こんな辛い形で祝いたくなんてないけれど。 それでもきっと、八戒さんは、悟空の誕生日は祝いたいと思うだろうから。 あああ、もう、本当に。心から。 …生きててくれて、ありがとう。ふたりとも。
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