最近、昔学校で習った(読んだ)近代史の人々の本が読みたいな〜と思って、手にとった一冊。樋口一葉、よく聞く名前で5千円札の顔にもなったけど、いったいどうゆう人だったのか、そういえば自分は何も知らない。
彼女は明治時代の歌人・小説家で、わずか24歳でその生涯と閉じました。 その人生は・・・読んで初めて知ったことですが、なんというか。 女性がお金を稼ぐことが難しいその時代に、家督として貧しい家と家族を守り、和歌を愛しながらお金を稼ぐために小説家となり・・・女性としての強さとすばらしい才能を持ち合わせながらも、心安らぐひとときも得られず、密かに想う人に想いを打ち明けることも(というか話す機会もなかなか)叶わず、病に負けて静かに生涯を閉じたのです。 この時代、しょうがないことだったのかもしれないし、彼女のように夢を持ちながら叶うことも名前が残ることもなかった女性はたくさんいるとおもうのですが、なんとも口惜しい気持ちになりました。 現代ではこんなに評価されているのに、とても若いのに、貧しさの中で寂しく病気で死ぬしかなかったなんて・・・著者もこのような思いと、彼女の作品のすばらしさに感動して、彼女の生涯を綴ったこのような本を書いたのでしょうね。
彼女のことを知った今、また新しい気持ちで彼女の作品を読んでみようと思いました。
2005年04月23日(土) |
「赤い長靴」/江國香織 |
江國香織の本の中に出てくる夫婦は現実離れしている気がする。もっと現実的なくだらないことも、日々のいろんな思いも結婚していればたくさん話すし、お互いに分かり合おうという気持ちはいちおうあるし、いちおうあきらめない―・・・はず、と思っていたのだけど。 この本を読んで、実はそんなこともないのかもしれない、と思ったのは、自分が結婚して時間が経ったからなんだろうか。と思った。
結婚した当初はもっと相手が分かりたい、分かって欲しいと思って相手に返事を求めたりいろんな要求を口に出したものだけど、最近そうゆうことが減ってきていることに読みながら気づきました。 でもそれはあきらめとか残念なマイナスな結果ではなくて、相手のことが(相手もきっと私のことが)分かってきているので、あえて昔したような討論を繰り返したりしようとはしないだけで、思想的な話が減ったりするのは恋愛中の盛り上がりを思い出せばさみしいかもしれないけど、今は今の二人の、家の中の空気の居心地よさがあって、外にいるときとか時々急に帰りたくなる―家が二人の世界で玄関は現実のと境界線で、というその感覚。 すごく分かるなぁと思いました。 たぶんそれは二人にしか分からない世界だけど、その居心地のよさ次第で結婚生活が続くかどうかは決まる気がする。危ういものだけど。 ただ、この本にでてくる旦那さんはあまりにも人の話を聞いていない気がします。 そこはそれ、小説なのでしょうけど、私だったらもっと聞いてくれる人がいいな。
2005年04月20日(水) |
「庭の桜、隣の犬」/角田光代 |
結婚して5年。宗二と房子は分譲マンションに住む夫婦。子供は いない。房子はいつも実家に行ってはお茶を飲み、おかずをもらって家に戻る日々を過ごしていてたいした趣味もない。 そして、宗二は四畳半の部屋を借りている―。
舞台が知っている場所ということもあり、「結婚5年目」の興味もあって読み出したけど、話はぜんぜん違っていた。 房子も宗二もとても自分勝手だけど、みんなこうゆう部分てあるんじゃないかと思った。 大恋愛の果てというわけでもなく二人が結婚した理由は、お互いに他のひとにはない共通点を見出したのだと思う。この人ならとなら暮らしても楽そうだ、とゆうか。でもその共通点のために、何にも進めない、変われない二人に房子は気づいていく。
「ゼロにゼロを足してもゼロなんだよ、」という房子の台詞が印象的でした。でも二人でいてもこのままじゃ何も変わらない・変われない、ゼロのままだと気づいた瞬間から房子の中で何かが変わりはじめます。 最終的に房子は宗二といることの将来を選ぶ。それは何も二人のためとかじゃなくって、自分が変わらないと離婚しても自分はずっとゼロのままだと房子は気づいたから。
人は他人と暮らしはじめると、生活に変化が出来何かが生まれるような期待を持つと思う。でも何かが勝手に生まれだして感動させてくれるわけはない。そう改めて気づかされた気がしました。 ようは、自分次第なんだと。
2005年04月17日(日) |
「雨と夢のあとに」/柳美里 |
柳美里は以前から苦手でほとんどまともに読んだことはなくて、 ただこの本はドラマ化のCMがとても気になって、どうしてもTVではなく読みたい、と思って買い、一気に読んでしまいました。
すごく・・・印象深いお話でした。ただせつなくなりました。 少女のお父さんへの愛と、お父さんの少女への想い、現実と49日間だけの幻。
お父さんと一緒の夜はいつも雨なんだけど、中に出てくる古い歌(詩)たちがますますその幻想的な夜の雰囲気を作り上げていて、その中で少女はだんだんと現実と幻想に気づいてくる。 でも、気づきたくない、分かりたくない。 その12歳という多感な時期の少女の気持ちと同時に現実をまっすぐに生きなくちゃいけないという彼女なりの責任感・思いがすごく伝わってきて、そしてまた49日間だけでも出来るだけ娘の側にいたかったお父さんの気持ちも、最後の別れのシーンはとにかく切なかったです。
いつも決まった作者の本を読みがちでしたが、柳美里の筆力というか、新しい感動に出会えた気がします。 ドラマはまだ始まってないので(しかも見るかも)分かりませんが、いい本だと思います。
2005年04月10日(日) |
「A2Z」/山田詠美 |
ひさしぶりに山田詠美が読みたくなった。 と同時に、結婚しているのに旦那さん以外に恋をする―というテーマにもひかれたのかもしれない。 自分自身、旦那さんのことは大好きで猛烈に恋をしていて結婚して幸せなのだけど、でもいつのまにかその気持ちが信頼や、なんて言うんだろう、友情とも違う、もっと責任やあきらめも伴う「パートナー」に近い気がして、あんなに7年以上も恋をしていたのに、もう恋を通り過ぎたのだなぁ、と実感することが最近多くなったのも事実だから。
本の中で、夏美は成生(10歳下)と恋をする。そして夏美の夫、一浩も冬子に恋をする。 山田詠美らしく、それぞれの恋も夏美と一浩の関係も丁寧に綴られていくけど、私が注目したのはこの夫婦のあり方(関係)。 2人共、帰るべき家〜それは文字通り2人のマンションなんだけど〜があるから、恋が出来る。 そして、恋は終わりがやってくる。
そうなのだ、初めは一緒にいるだけで幸せで2人だけの小さな決まりごとや習慣や出来事が増えていくと同時に恋もどんどん熟していくのに、ある瞬間からなぜか、恋は熟れ過ぎていく。相手の一言や行動が気になり、一緒にいるときの幸福感がどこかへ消えていってしまうのだ。そして恋は終わる。
一浩も夏美もあっという間に恋に落ちていき、そして丁寧に恋を紡いでいくけど、それはいつか終わっていつかまた家に帰り、二人でその恋の終わりについて語り合う時間が来ることを、体のどこかで知っていたのではなかったのか―・・・私にはそんな風に思えました。
いずれにせよ、ひさしぶりに山田詠美の丁寧に恋を綴る文章がとても心地良くて、とても後味がいい本でした。 文庫版の、江國香織の解説もぜひどうぞ。
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