一橋的雑記所
目次&月別まとめ読み|過去|未来
どうして素直になれないのかねえ。
「……もしもこの記憶が無かったら。憎んでいたかもしれない」
手と手が届く距離に在って。 何でその先に指を伸ばせないのかねえ。
「……私、もしかして、嫌われた?」
そんな筈は無いなんてでも。
「だから、僕にしておきなさいって」
教えてやらない。
怖かった。
「……泣いてるの?」
自分なんてどうでも良かった。
「どっか、痛い?」
腕の中、失われていく温度が怖かった。
「……綾ちゃん?」
ただ、それだけだったのに。
「本当は、どうしたい?」
分かる訳ない。 この気持ちは、自分のものですらない。 分かっているから。 これ以上は、側には、居られない。
なんでかな。
「あなたを守る、それだけでした」
いつからか真っ直ぐには見てくれなくなった。
「あなたに救われた、だから、でも」
違う。
「これ以上、此処に居る事が、あなたの為になるとは思えない」
そんな事無い。 あの時、泣いてたのは、私も同じ。 悲しい色の目。 この場所に、繋ぎ止めないと。 何処かへ行ってしまいそうで、怖かったのは、私。
「それは……最初から、間違っていたんです」
そうじゃない。 ちゃんと、見て。 私を、見て。 そこから始めれば良い。 それだけなのに。 何で、分からないのかな。 分かってくれないのかな。
何だかこう。 実写版のネギ先生の第4話見て。 昔書いてたオリジナルを思い出してみたり(え)。
流石に恥ずかしいんで。 ノーリアクション推奨で一つ(今更)。
2006年03月11日(土) |
やってもた……第二弾(何)。※ホントは071014. |
なのはです。 しかも、コミクス版A'sを読んでいない方には。 ちょっと通じ難いかもです(えー)。 ぶっちゃけ、コミクス版A'sの「Epologue of ACES」の。 裏読みオンリーですんで(えーえー)。
「ちょっと、頭、冷やそうか?」
ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいっ!(平伏土下座)。 出来れば、散歩コースが良いです己的にh(蹴倒
バリアジャケットを纏う。 胸の奥から、力が湧き上がるのを感じる。 掌に感じる、確かな信頼。 解き放たれる、胸の奥の熱。 この気持ちは多分。 全力で向かい合う相手としか、分かち合えない。 それを確かめ合うことが出来る今が。 多分、何より幸せなんだと思う。
take a shot
「フィールド形勢!発動準備完了!」 彼女の力の籠もった声が響き渡る。 「お待たせいたしました、おっきいの、いきますっ!」 その表情は凶暴なまでに全力全開で。 間近に位置した私の頬を綻ばせる。 時間にすれば瞬きよりも短い刹那に、彼女の視線が私のそれと交わる。 「N&F、中距離殲滅コンビネーション!」 事前の打ち合わせにある筈もない掛け声が口を吐(つ)いて出る。 「空間攻撃!ブラストカラミティ!!」 チャージされた魔力が全身を駆け巡る。 その高揚感を、隣り合わせの彼女が感じない筈はない。 ターゲットとして捕捉した、あの子も。 「どっこい、こっちも詠唱完了や!」 目の前にかざした手指を鋭く揃えて、不敵に微笑む。 「広域攻撃Sランクの意地がある!!」 訓練場中に満ちる、びりびりとした空気が肌に痛い程。 それは、それぞれが限界まで高めた魔力と気力が弾ける痛み。 知らず、頬が引き締まる。 思わず零れ落ちそうな笑みを堰き止める。 全力を発揮すれば落とせないもの、貫けないものはない筈の、私の彼女の最大限の砲撃を、避けるでもなく真っ向受け止めてなおかつ、同じだけの魔法威力で此方を圧倒しようとするあの子。 背中を走る、心地良い程の慄き。 そう、彼女に逢うまでは、知らなかった。 自分の全身全霊を掛けてぶつかる事の、心地良さ。 「全力全開!!」 「疾風迅雷!!」 彼女と私の叫びが重なる。 戦場でだけ響き渡る、ハーモニー。 「ブラスト・シュート!!!」 非殺傷とはいえ手加減抜きの、魔道砲撃を。 まともに受け止めるあの子の頬が軽く歪む。 それはそのまま、私と彼女の頬に浮ぶそれと同じだと確信する。 響き渡る、破壊音。 堅牢な結界の中、乱反射するように暴走を始める色とりどりの魔法光が、訓練場中の建造物を次々と崩壊させていく。 飛び散る破片が、頬を掠めるのにも瞼を閉じず、私は呼吸の届く距離に在る彼女を振り返り、吹き荒れる嵐に耐えて此方を見上げるあの子を見据える。 ――嬉しいと、思ってもいいのかな。 心の内にふと、零れ落ちた言葉に気づいたように。 彼女が、あの子が、ぐっと顎を引きつけながら私の視線を受け止め、鋭い視線を送り返してくる。 ――もっと高く、もっと強く。 自分の力を信じて、良いのかな。 ――この手に届く全てを守れるように。 ――その為の力で、命やから。 ぞくりと全身を駆け巡る高揚感と共に、彼女たちの声が脳裏に響く。 いや、響いた気がした、それだけかもしれないけれども。 ――有難う。 手加減抜きに、全てを突き通す強さで向かい合う。 私は……私たちは、多分。 何より大切で得難いものをこの瞬間も、築き上げている。 だから、それを、信じれば良い。 不確かで不条理なこの世にあって。 混じり気無しに、感じ取れるもの。
あちらこちらで燻り熱を帯びた残骸。 呆れ果てたように此方を見ている、私たちのリーダー。 訓練場をガードするに全力を使い果たして疲労困憊の、彼。 身体的な損傷はそう酷く無いものの、細かい傷を受けて脱力中の、あの子の守護騎士と私の使い魔。 それでも、罪悪感なんて少しも無くて。 あるのは、全力を出し切った後の、心地良い疲労。 「やってもたなあ……」 模擬戦中の激しさとは格段の落差を感じさせるあの子の声。 「やっちゃったね」 その言葉を受けて、悪戯っぽく微笑みながら呟いた、彼女の声。 「でも、楽しかったよね?」 そして、それらに正直に応える、私の声。 埃っぽく煙っぽい訓練場の空気に暫し、沈黙が満ちて。 「……ははは」 誰とも無く、笑い声が零れ落ちて。 呆れ顔の執務官を筆頭に、何が何やら、と肩を竦める周囲には申し訳ないと思いながら。 お互いが共通して抱いたこの爽快感を胸に。 私たちはいつまでもいつまでも、笑い続けていたのだった。
2006年03月10日(金) |
やっちまった……。※ホントは、070920. |
初なのは(えー)。 時系列的には、StS開始前後。 なのはとフェイトちゃんが同室になってからって事で。
今でも、夢に見る。 掌に感じる、衝撃。 頬に触れる、熱い飛沫。 それが全てだったから。 掴もうにも滑り落ちる温もりを求めて。 何度も、何度も。 追い掛けて追い掛けて。
call me
「……ちゃん! フェイトちゃん!」
ずしん、と沈み込んだ後、一気に引き上げられる意識に、襲い来る眩暈。 ぐるぐると回るぼやけた視界の中、深い藍色が揺れる。
「……な、のは……?」
無意識にその名を呼んでから、それが彼女の瞳の色だと気付く。
「フェイトちゃん……」
ぶれる彼女の心配そうな表情に、少しずつ焦点が絞られる。ごくり、と唾を飲み込んだ咽喉が思いの外、痛い。
「どうした……の……?」 「……もう、」
やっとの思いで零した言葉に、彼女の表情が呆れた色に染まる。
「それは、私の台詞だよ!」
軽く頬を膨らませながら、彼女は少し乱暴に私の前髪をかき上げるようにして額に触れた。
「すっごいうなされてたよ?」 「私……?」
思わず呟き返したら勢い良く頷いてみせた彼女は、いつもより随分と幼く見えた。 そう、初めて逢った、あの頃みたいに。 気付いて、また、視界が歪む。
「フェイト、ちゃん……?」 「……大丈夫だよ」
応える声が、自分でも分かる位に震えている。その事実に、強く臍を噛む。
「私は、大丈夫」 「フェイトちゃん……」
さっきまで見ていた夢の事は覚えていない。けれども、何となく想像はつく。 崩壊する、閉ざされた世界。あの人の狂気を孕んだ儚い夢を閉じ込めた場所。永遠に目を覚ます事の無い、私の血と肉を生み出した源。差し伸べた手を最後まで拒んだのは、あの人の、余りにも哀しい、愛の深さ。 私が、求めて、得られなかったもの。
「大丈夫」
目を閉じて、深く息を吸って。
「大丈夫だよ、なのは」 「……駄目だよ」
呟いた私の言葉に被せるように、強い声。
「駄目だよ、黙って独りで、我慢しちゃ」
一つ一つ区切るように零された声に、驚いて見開いた視線の先、怖いくらいに真剣な眼差し。
「フェイトちゃんだって、分かってるでしょ? 泣きたい時に無理に我慢しちゃったら駄目だって」
差し伸べられた掌が、そっと頬に触れる。 いつだったか。 あの、優しい祝福の風を纏った魔道書の魂が空へ登ったあの冬。 二人で訪れた、その主である私たちの友人は。 自分が背負った罪や、自分が守るべき騎士たちの心を思って、涙一つ零さず耐えていた。 その笑顔が切なくて、哀しくて、私たちは。 私と、彼女は。
「……やだな、私」
それはもう、随分と前の事で。 でも、私の心を捉えて放さない記憶は、それよりも更に遠いもので。
「もう、大丈夫な筈、なのに」 「うん」
頬を滑る彼女の掌が、そのまま首を経て、肩を抱く。
「大丈夫だよ、今はもう。フェイトちゃんは」
でもね。 そういって、彼女は背中に回した手を軽く上下させる。
「消えないから。痛みとか、哀しみとか、辛さとかは、薄れたって、消えないから。降り積もるから。だから、我慢しなくて良いよ」
私の前では。 深い色の瞳が、真っ直ぐにそう語り掛け、柔らかく微笑む。
「……なのは……」 「うん」 「なのは……」 「うん……」
あの日。 何度も繰り返し呼んだ。 彼女の名前。 それは、私にとって、初めて手にした。 確かな光、だった。
世界の全てが足元から崩れ落ちて。 差し伸べた手は空を切り。 あの人は、私の想いを全て置き去りにして、虚無の淵へと、消えた。 永遠に、目覚めない、最愛の娘と共に。
それが、ただの拒絶では無かったのだと信じたい気持ちと。 決して、伝わらなかった想いの結末なのだと諦める気持ちとが。 いつまでも、いつまでもこの心からは消えなくて。 望まれて、でも、その期待に背いてただ、この世にある自分の生を。 疎ましく、重く思う心を捉える闇が消えなくて。
だから。 彼女の名前は。 私にとって。 文字通りの、光明で。
「な……のは……」 「うん、フェイトちゃん」
どんなに歳月が流れても。 多分、どんなに大人になっても。 消えない傷を、痛みを。 丸ごと知っていて、受け止めてくれた、彼女の名前が。 私には、文字通りの、光明で。
「なのは……っ!」
その温もりが、真実で。
「大丈夫だよ、フェイトちゃん」
縋る私の名を呼ぶ、いつもの彼女の声が暖かくて。 そうして、私は、夜の淵から立ち戻る。 繰り返し訪れる夜でも、明けない事は決してないのだと信じることが出来る。
いつか。 私の名前が。 誰かの光になれたなら。 遠い時空の彼方に消えた哀しい思い出も報われる。 そう、信じる事が出来る。
「……なのは」 「なぁに?」 「ありがと……」
胸元に呟いた声に彼女の、いつもの照れ笑いが振り注ぐ。
私がこうして。 独りでも歩けるのは。 なのは。 君が居るからだよ。 君が、私の名前を呼んでくれたからだよ。
その掌を掴み取って。 私は、再び、眠りに落ちる。 やがてくる朝を、待ち望みながら。 その光を心から、信じながら。
― 了 ―
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