榎本さんがうちに入り浸るようになって、三週間ほどになる。それまでも、ちょくちょく外でばったり会うことがあって、そんなときはあいさつくらいはするような関係だった。
それが、いまや毎日毎夜、仕事帰りの私を迎えにきてくれる。否、待ち構えている。ストーキング行為である。 いったんは振り払ってしめ出すのだが、榎本さんの猛アタック(大声でドア越し・窓越しに私を呼ぶ、ベランダにまわって網戸によじ登る、ガラス戸を叩く引っかく等の悪質行為)に根負けし、家にあげると、夕飯の支度をしている間じゅう猫なで声で甘えてまとわりついてくる。 榎本さんの舌はざらざらしている。舌の裏側はつるつるしている。
最近は勝手にふとんで寝ている。許可した覚えもないのだが、断りもなく、先にふとんにはいって寝入っている。 よそでもそうしているのだろう。たぶんうち以外にも、いくつか泊めてもらうところがあるはずだ。といってもこの三週間でうちに来なかった日はいちにちか、ふつかといったところなのだが。
なんだか恋愛のようなのである。
愛おしく、そしてすこし疎ましい。 けれど、相手は意に介さず。いたってマイペースなのが、癪なのだ。
やれやれ、これから寝床をめぐる陣地合戦をはじめなくてはならない。 おやすみ、えのも。
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