baby poem
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にゅるん、としたものがある。 夏の間使われない居間のファンヒーターの前 長さ30センチくらい、くすんだ水色 たっぷり液体を含んでいるので表面から蒸発熱が奪われ 温度は周囲の気温より少し低く保たれている。 ちょっと涼しげ。 その家族は、なるべくそれを見ないようにしている。
床がぬれて困るので、家族はそれ用のトレイを用意した。 百均で買ってきた、青い透明なトレイ。 液体があふれそうになったらティッシュでトレイをふき取る。 思い切って、お父さんが提案したのだ。 気がついたらそこにあって、それが何なのかわからない そのにゅるん、としたものは、生きているのかいないのか。 からだにいいのか悪いのか。
家族は日中いないので、日の当たらないその場所は だいたい一日薄暗いまま レースのカーテンも揺れもせず テーブルの上には、フタつきの灰皿、シャープペン、リモコン、昨日とった電話番号のメモ・・・ 時間だけが過ぎていく。
家族が帰ってきて、でんきをつける。 テレビをつける。晩飯を作って食う。 にゅるん、としたものは、トレイの上で光を映す。 冬になったらファンヒーターで乾燥して、干し柿みたいになってしまうかもしれない。 今はそれについて考えないようにしている。
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