<梅見 そして 父の傘寿>
4月を思わせるような陽気の中 友人の車で梅見に出かけた
紅梅は8分咲き 白梅はまだ蕾のままの木もあったが それでも一面の梅林は見事な色を見せて迎えてくれた 紅梅は薄桃から真紅まで色も種類も豊富 一重の白梅はシンプルさが空に冴えて美しい
2月20日 父の80回目のお誕生日 傘寿である
冷たい娘はいつも忘れていまいそうになるのだが・・・ 夜になって電話してお祝いを言った
「おぅ ○○か ありがとう 80年生きたよ」
「そうねぇ」と笑って返しながら目頭が熱くなってきた
遅かったねと言いたげな父の話っぷりに・・・つい
「お父さんの年を数えてたら こんなに遅い時間になったのよ」
プレゼントもまだ用意してないけど・・そう思いながら 普段どおりの冗談を交えた会話をする
父はわたしが小さい頃は仕事と友人との交流で あまり家にはいなかった気がする だからそんなに遊んでもらった記憶もない
中学生の頃は単身赴任をしていて 偶にしか帰宅しなかった それでも家にはまだ若い祖父母も居たので 寂しいと感じた事はなかった
私が高校に入った時、父はまた転勤になり 戻って来たのだが 今度は私のほうが寮生活を送る事になる 母は仕事を持っていたし弟も居たので あまり来れなかったが・・・ 父は出張のたびに逢いに来てくれた
その頃から父が大好きになった まだ携帯もメールもない時代・・ 父からの達筆でしたためられた手紙を読むのが好きだった 男らしい文体の手紙を 私はとてもいい文章だと思った
「高校はあなたの自由にさせてあげたんだから」と言う母の気持ちを尊重して短大は自宅から通学した 週に2〜3度、部活で帰りが遅くなる私を父はいつも校門の外に車を止めて待っていてくれた
就職してからも私が遅刻しそうになると 遠回りして車で送ってくれた
今思い出せば世話になりっぱなし・・・ 何の親孝行もしていない
電話した時は入浴中だった母から電話が入る 今夜ふたりで外でお祝いをしたとのこと
「70代の間はそんなに心配しなかったけど・・・ 80歳になると何だかね・・・」
「だいじょうぶよ まだまだ元気だし・・」
いつも強きな母の本音に少し寂しさを感じながら・・・
父の傘寿のお祝いに孫たちもみんな集めて 温泉にでも行こうよと話して電話を切った
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