昨日はヴァイオリンだったのに、今日は趣を変えてワーグナーです。演奏会形式ですけど。モネ劇場の大野和士と並ぶ日本のエース、大植英次とハノーファー北ドイツ放送フィルです。 ワーグナーは特別です。最初の数フレーズで私をドーン丸ごと演算不能状態に陥らせてくれます。その後、延々と音楽が頭の中で鳴り続けます。全幕聞いた日には翌朝まで鳴っているほど。室内楽とどっちがすきか、とか他のオペラと比べてどうか、というような比較を一切拒絶するのがワーグナー。 オペラで真面目に見ると長くて体力勝負になるので、1幕だけの演奏会方式も悪くないです。集中力が続きます。終わってしまうと、あ、これで終わりだったか、と欲求不満感も残るけれど、それはまあ忘れて陶酔した自分が悪いってことです。 前半には「リエンツィ序曲」と「ジークフリート牧歌」(←ワーグナーも一応人の子だなあ、ってとこ)を聞き、その後、後半に「ワルキューレ」の1幕だけ、つまりジークムントとジークリンデが出会ってから愛を歌い上げるところまでです。 ジークムント役のロバート・ディーン・スミス(平凡な名前だからってフルネームで呼ばすな!)、第3場の始めに♪ヴェ〜〜〜〜ルゼと2度叫ぶところで大盤振舞。息の長いこと!あれじゃあヴェルディなんてお茶の子さいさいだわ。(この前この人の『運命の力』を聞いたばかり。) ジークリンデ役のリオバ・ブラウンはちょいと迫力不足かな。ヴィジュアル的には文句なしなのに、なかなか迫力とヴィジュアルと兼備の人っていないねえ。 びっくりしたのは、フンディング役のシュテフィンガーなるフィンランド人のバス。軽々と大音声。まいったな〜。朝起きた途端に歌えそうな感じ。しかもあんまり悪役声ではなくて、澄んだいい声。『トリスタンとイゾルデ』のマルケ王かなんか歌うのが聞いてみたいわ。 そして指揮者の大植さん!小柄だけど顔は相当濃い。似てもいないのに、松方弘樹が思いだせるのはどうして?振りがあまり大きくない、小ぎれいな指揮で、オケもよく鳴りました。すご〜く好みっていう音でもないけれど、チェロ軍団はぞくぞくさせてくれましたねえ。満足、満足。
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