今日なすべきことをなせ
過ぎ去れるを 追うことなかれ。 いまだ来たらざるを 念(ねが)うことなかれ。 過去、そはすでに 捨てられたり。 未来、そはいまだ 到(いた)らざるなり。
されば、ただ現在するところのものを、 そのところにおいて よく観察すべし。 揺らぐことなく、動ずることなく、 そを見きわめ、そを実践すべし。
ただ今日まさに作(な)すべきことを 熱心になせ。 たれか明日 死のあることを知らんや。 まことに、かの死の大軍と、 遇(あ)わずというは、あることなし。
よく、かくのごとく見きわめたるものは、 心をこめ、昼夜おこたることなく 実践せん。 かくのごときを、一夜賢者といい、 また、心しずまれる者とはいうなり。
「中部経典『一夜賢者』」
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