Blue tears...小雪

 

 

春風。 - 2010年05月03日(月)

父が1月10日に眠るように天国へ旅立った。

享年70歳
まだまだやりたいこと やれることをいっぱい残して。

でも父は頑張った。頑張った 人生を。そう 最後の最後まで。
自分を愛し 家族を愛し 友人を愛して。


私は?
父の病気発症後から生命の告知を聞いてから鬱がどんどん酷くなり
一切の家事が出来なくなり 自分の事が分からなくなり
命の期限が限られてる父のお見舞いにも行けなくて
子供の保育園の送迎だけして。
毎日ほとんど寝たきりになった。

なぜ?
自分自身でも分からないけど。
多分 父を失うという不安、長女なんだし
毎日見舞う母を気遣わなきゃという
立場的プレシャー
でも体が動かないという現実との葛藤。
苦しくて 悲しくて。
布団の中でもがき続けていた。

更に父が逝くのを見るぐらいなら自分が先に と 2度自殺未遂。
救急車のお世話になり一泊入院した。
夫にも子供にも 父の事でいっぱいいっぱいの母にも心配掛けて。
夫の両親も 子育て出来ないならウチで引き取る。とまで言われた。
夫も廃人同然の私に同情の由なし。
心の内で離婚すると覚悟を決めているのを感じた。

そして父は逝った。
病院から自宅へ戻り 自分の布団で眠る父のその顔は正直血の気の無い蝋人形だったが
穏やかな顔だった。
その晩 ロウソクの火を絶やさないようにって。でも皆悲しみで心も体くたくただった。
そんな時でも気の利く妹が変わりばんこにロウソクをみようって。
じゃあ 私どうせ眠れないからって1時と3時に様子を見ると言って
朝は妹が見ると決まった。
母はリビングに布団を敷き私の子供と寝ていた。

深夜1時。
皆を起こさないようにそうっと2階から降り
冷房と父を包んでるドライアイスで冷え切った和室へ入りロウソクのチェックとお線香を。

父の顔をまとった真っ白の絹のハンカチを取り
冷たくなったその顔を撫で 

お父さん
ありがとう
ありがとう
ありがとうございました。

と何度も嗚咽を抑えつつ涙を流し眠る父に手を合わせた。

次の日色々と葬儀の段取りを取りに葬儀社の担当が来て家はバタバタしていた。
親戚の叔母達が駆け付けてくれたり。
叔母達が帰り一段落して いわゆる『おくりびと』の女性がみえた。
家族に囲まれながら それは静かに厳粛に取り行われた。
部屋には父の好きだった古い映画のCDが流れ 皆黙ってそれを見守って。

好きだった洋服に着替え 蝋人形のように真っ白だった父に化粧がほどこされ頬はうすっらと紅が差し本来の父が蘇った。
『どうぞご家族の皆さまだけで最後のお別れを』と おくりびとの女性は部屋を出た。

ああ。
ここまで書いたら思い出して泣いちゃいそうだよ。
一番泣けた時間だったから。

皆がお父さんの近くへ寄り頬を撫で 手、指、足、頭を撫でた
皆涙を流し ありがとうありがとうって号泣しながらそれぞれの想いを口にした。

ねぇ お父さん?全部見ていたでんでしょ?
そうだよね?
ずっと父の居る気配を感じていた。

ねぇ お父さん。
お父さんの娘で 私良かったよ。本当に。本当に。
最後の最後まで心配かけてごめんね。
沢山の愛情をくれたね。
なのに私は自分を粗末にして。

海で手を繋ぎ泳ぎ方を初めて教えてくれたのも
公園で後ろを持ち自転車を持ち走り方を教えてくれたのも
真夜中 怖くなってお父さんのベッドへ入ったよね
貴方はいつも優しかった。
いつも守ってくれた。

貴方の転勤が多くて 内向的な私はよく転校先で注目の視線を浴び苛められた事 貴方は知らないけど
苛めた奴らを 今もどれだけ憎んでいるかも。
貴方は知らないけど。知らなくていい。

貴方は精いっぱいの愛情を注いで育てて見守ってくれたから。
知って欲しかった事も本当はあるけど それはずっと私のココロの奥にしまっておくから。


父が亡くなってまだ4ヶ月。
ずっと貴方が見守ってくれてるのをココロで感じてる。

あれから 私の鬱は快方に向かってます。
もう二度と自殺は考えないと言ったら嘘になるけど。
病気を治して元気になります。と手を合わせて貴方を見送った。
約束したからじゃなく 恩返しでもなく
初めて自分でそう思ってる。

そして 今。
まだ相変わらず薬との付き合いでなんとか成り立ってるこの生活。
でも去年に比べたら別人だと 義母に言われた。
母も安心してくれている。それが務めでもある。

波はある。
でも信じたい。
父、母、に愛されて育った自分の未来を。
こんな私を『ママ』と呼ぶ子供の未来の為にも。

喜怒哀楽が無くなってもう数年だけど
父が逝った現在(いま)
私は少しずつ変わって来ている。
何年もかけてきた鬱との付き合いや人間関係も変わりつつある。

やり直すんじゃなく 取り戻すんじゃなく 変わるのでもない
生きるってことだけ。

これまで出来ないと思い込んでた事にも思い切ってトライしたい。
死んだら全てが終わりじゃないことも 父の死が教えてくれた。


また会おうね。お父さん。
きっときっと笑って。

もう何年も閉ざして来たこの臆病なココロの窓を少しだけ 
少しずつ開けてみよう と思う。

怖がってる暇なんかないよ?ってそう言い聞かせて。

人生ももう40年生きた。
ヘビースモーキングも相変わらず。明日死んじゃうかもしれない。
でも今は今まで欠けてた私の中の私が この少し空いた窓から
優しい春の風を感じてる。
それはまるで暖かった父のようです。


ありがとう
ありがとう
ありがとう

貴方が大好きだったし
また貴方の娘に生まれたい

しばらくさようならだね。
いつかまた貴方の笑顔の元へ行きます。
その時はきっと私も笑顔で ね?

お父さん ありがとう







小雪
















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