ことばとこたまてばこ
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2008年06月07日(土) |
写真を想っては燃えゆく筆談ノート |
一冊の筆談ノートを燃やした。 おそらくは4ヶ月分の会話が詰まっていたノート。
言葉が燃えて灰に。 言葉が形となってそして消えゆく。 言葉の霧散を目の当たりにする。
言葉の立ちのぼる先はあの天空で、 言葉をちりぢりにさしめるのはかの風で、 言葉を無へ還元するのはこの空気で。
ああ、なるほど、だからか、そうか、と急に目の覚める思い。
この世界にはまるで言葉がぎっしりと、密と、とほうもなく凝縮している と思っているおれはだからこの世界という言葉を撮りたいと欲してやまないのだ。
己が内にある言葉を具現化したいという欲求が、どうしてもあるらしい。
己が身を愛いやつめ、と愛撫するかのように甘く言うならば 音無し子故に言葉の欠落に人一倍敏感となったため、 言葉に対して並々ならぬ確執が生まれた。 そのみっともない執着がそれでも揺るぎのない世界がぶつかることで えも言われぬ情景を写真のうえに捉えることになりはしないか、と。
己が身をどあほどあほ、くそたわけ、と唾棄するように冷徹に言うならば、 世界を世界として受けとめることを放棄して、 世界によって沸き上がる己の言葉だけを都合の良いように 駆使して調整して適当になまぬるく信じようとしていたのだ。
そんなことにきづいた朝方。
おれは世界を世界として受けとめるほうが、やっぱり、いい。
己の言葉なんかで世界をどうにかできる、と思えるほど世界が脆弱だとは思えていないからね。
だから言葉を捨てねばあかぬ、と思った。
それもあえて形にして判りやすく。
うん、そう。だから燃やしたのだった。筆談ノートを、4ヶ月分の言葉をさしあたって、ね。
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