2006年01月26日(木) |
一幕物の二本立ての舞台 |
お友達がシアタートラムに二度足を運んで貰ってきてくれた、 剛君主演舞台の『父帰る』『屋上の狂人』のチラシをときどき眺めている。 昨年の年末の忙しいときに、わざわざ送ってくれたものだ。 チラシを見て心が震えた。 剛君の顔写真と名前がしっかり載っている。
出し物が『父帰る』『屋上の狂人』というのも驚いた。 どちらも一幕物の戯曲で、現代では古典のような作品です。 この作品の作者、菊池寛は最初は作家になる気はなかったという。 江口渙によると、 後年あれほど有名になった『父帰る』や『屋上の狂人』を『新思潮』に書いても、 当時の文壇では誰ひとりツバもひっかけなかった。 ところが、親交のあった江口渙と芥川龍之介だけは、 この二つの戯曲を高く評価していた。
芥川龍之介は別の雑誌を紹介して、菊池寛に書かせた。 それは『恩を返す話』という短い歴史小説だった。 この短編小説を読んだ江口渙は大変感動して、相当長い手紙を書いた。 「この勢いに乗ってぐんぐん後を書くように」と激励した。
それまで作家になる自信などまったく持っていなかった菊池寛が、 その手紙を読んで自信を得て作家になる決意をし、 次々と作品を書いていった。
「あのときもし、江口渙からあの手紙をもらわなかったら、 自分は一生たんなる新聞記者としておわっていたかもしれない」 菊池寛は後年、『新潮』に載せた自叙伝の巻頭にこのように書いたという。
江口渙は語る。 人間というものは一つの作品を読んで本当に感動した場合には、 感動したということを正直に書いてその作者に送るのがいいんだと思う。 正直に書いたものは、 その作者にも正しい意味での感動をあたえて、 勇気をふるい起こさせることになるからだ。
私はチケットの入手がどうであれ、剛君の舞台をとても楽しみにしている。 『父帰る』と『屋上の狂人』 まったく相反する性格の人物を、二本立てにして披露する主演の剛君。 私は今から胸をわくわくさせている。
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