すずちゃん、お料理のレベルがすごく上がってきたね。

唐突に夫にそう言われました。

　そうかな？最近お仕事あんまりしてないしね。

そう言ってごまかしたけど…

何を作っても必ず「美味しい」という夫。不味くてもぜったいそんなことは表に出さない人だけれど、どのお料理を指すでなく唐突にこういうことを言われると本当は嬉しくなるものなのでしょう。
でもわたしは…
お料理を作るのが好きな彼氏が知らないことを次から次へと教えてくれるのです。彼氏の口調は優しくて楽しくて、彼氏が話すお料理は作ってみたくなるのです。

満足そうな夫に、なぜすずが今日このお料理を作ろうと思ったのか話せません。
すずの知らないことを教えてもらって彼氏にはとても感謝しています。でも夫がすごく喜んで美味しいと言ってくれたことは言えません。

どちらにも、何かを隠していかなければいけないのですね。
両方を裏切っているような気持ちには、いつか慣れることができるのかしら…。