綿霧岩
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野口体操とは、野口三千三(のぐちみちぞう)さんという方が、太平洋戦争の後、体育の教師としてこれから子供たちに何を教えていけばいいのかと、またご自身の腰痛を治すのには、と考えられて作られた体操だそうです。
何をするにしても、大切なことは、まずとにかく緩めること。 力を抜くこと。 人の体は生きている水袋。 鏡は見ずに、自分の体の内部感覚だけを頼りに動いてみる。 始まりはいつでも見えない中にあって、外に現れる形はその結果。 正解はなく、一人一人違う、自分の体を実験室にして自分の体を探る、 自分の体重と、そのお返しの地球からの力だけで体を動かす、私たちはみな地球にぶらさがっている、 バランスが崩れることが動きのはじまり、
まだまだあるけれど、ワークショップの間にかけられる言葉はこのように、涎が出そうなほど魅力的で、優しかった。
私は言われたままに動きながら、ある瞬間、本当に今新しく自分が生まれたように感じて、なんだか涙が出てきてしまった。 60兆もの細胞全てが水を含む、人の体。 分子の集まり、その淀みが私の体になっている。 水の粒が膜に覆われ、皮膚になり、内臓ができ、手や足や外側の形ができる。 皮膚が空気を感じること、手の指が指として動くこと、呼吸すること、心臓が血を体中にめぐらすこと、 足が、足の裏が、地球を触り、歩くこと。 人としてこの世界に生まれてきて、体験したかったことがあるならば、それはこれじゃないかと思った。 これを経験できただけで、もう充分じゃないかって。 赤ん坊が生まれてきたとき泣くのは悲しいからじゃない、うれしいからだ、絶対そうだとその時思った。
戦後の子供として、こんな体育の授業を受けたかったと切に思う。 子宮委員長はるちゃんの話だって私は小学校で習いたかった。
でもいい。出会う準備ができたからこそ、出会えるものなのだ。 今も今までも今からも、全部が素晴らしい私の人生だ。
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