京都秋桜
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2005年04月12日(火) |
純白革命【オリジナル】 |
鳴り響くは病院のとある一室。
「いぃ――やぁ――だぁ――っ!!」
バタバタ暴れる十五になったばかりの少女に、医者の卵である研修医は毎回頭を悩ます。彼の研修は彼女の面倒だけで終わってしまいそうである。 ここは病院で、彼女は病人。それでも、目の前の彼女病気を持っているとは思えないほど元気。 普段から自己主張が強い彼女だが、この時間は格別と言えた。本当に、うるさいという文字通りだった。 だけど、彼は懲りずにやって来るし、彼女を見放さなかった。 彼女の部屋は個室で、しかもナースステーションに近いせいか、どの部屋よりも様々な種類の薬の匂いがした。 病院特有の、好きな人もいれば嫌いな人もいる、あの匂い。
「でも、これ飲まないとよくならないよ、病気」 「うるさいわねっ! そんなもん飲まなくたってわたしは健康よ!!」
先日、吐血した人が何を言うか。そう思ったが研修医は言葉にはせず、黙っていた。 確かに彼女の言う通り、その精神力だったら病気のほうが恐れて逃げていくだろうと冷静に判断する。納得してしまうが、立場上ここでひくわけにもいかない。 今時珍しく染めていない彼の黒髪が憂鬱色に染まる。
「現にこうやって入院してるのに、何言ってるの。ハイ、飲む」 「やだもん」
人が折角優しく言って薬を差し出しているのに、彼女はそれをことごとく跳ね返していく。その突っ張ったところが彼女の第一印象で、それによって彼女への接し方が変わる。 だから、彼女はそりが合う人はとても合うが、そうでない人とはまさに冷戦状態である。基本的には、あとはどうでもいいという分類に彼女の中では分けられる。 恐らく研修医はどうでもいいという部類の中でもお手伝いさんという項目に入っているのだろう。
「まずいの嫌い。なんでもっと美味しくしないの?」
そんなの研修医に言われても困る。薬剤師にでも何でも言ってやれ。彼は本気でそう思いながら、彼女に何とか薬を飲ませようと試みる。 そう、薬なのだ。彼女の敵は。 まずいといって一蹴して終わらせようとする彼女の意見も尤もだった。飲んで欲しいならもっと美味しくしやがれ、コノヤローみたいな勢いが彼女にはある。
「だいたい、嫌いなんだって。粉薬は」
錠剤だったら文句も言わず飲むと彼女は言う。これは本当のことだった。 実際に前の薬は錠剤だったため、医者も看護師も苦労はしなかった。しかし、そのときの状態を知らない研修医の彼は、彼女が黙って薬を飲む姿が想像できない。 彼にも経験がないわけではなかったので粉薬が嫌いな気持ちはよく分かった。飲んだ後口に広がるアノ感じが堪らなく嫌いだった少年時代を反芻しては目の前の彼女を重ねる。 だからといって「はい、わかりました」と言って薬をさげるわけにもいかなかった。 溜息をつきたい気持ちを抑えて、彼は言葉を紡ぐ。
「病気に効く成分が粉にしか入ってないからしょうがないだろう」 「しょうがないって何よ、それぇ。それを作るのがアンタの役目でしょう!」 「いや、僕は研修医だから…」 「どうでもいいから、その薬と一緒に出てって!!」
枕を投げつけられた研修医は慌ててそれを受け止める。枕を投げたせいで、テーブルの上にあったガラスのコップが床に落ちた。同時にガシャンという音がした。 ベッドの上に仁王立ちしている彼女はコップよりも枕を受け止められたことが気に入らなかったらしく、あからさまに嫌そうな顔をしている。 着ている赤いチェックのパジャマはお気に入りだと言っていた。 年齢のわりには細身で小さい。やはり病気のせいか。 後ろの窓から入ってくる風が彼女の長い黒髪を揺らした。 彼女の性格を言えと言ったらまず【口が悪い】と出てくるだろう。彼は妙な自信を持って自己完結させる。 研修医は薬を作るわけではない。役目が違う。社会的分業の違いを指摘されても困る。それはちゃんとその担当の人に言ってやれ。彼はそう思うが、口にしたところで彼女がそれを受け入れるわけではないことが目に見えているので敢えて言わない。 そんなことを言ったらその三倍近くの文句が返ってくるに違いない。 それに、彼女だって、それを理解していないわけがない。薬剤師という職種があることくらい中学生なら知っているはずだ。 何より彼女は賢い。それが分からないほど勉強的に馬鹿ではない。
「出て行くわけにはいかないよ。ちゃんと薬飲んでもらわなきゃ」 「何度も言ってるでしょう。わたしは飲まない。嫌いだもの」
枕をそっとベッドの上において、持っていた薬をテーブルの上において、割れたコップの処理を始める。 そんな彼を見て、彼女は少々罰が悪そうにベッドの上に座る。 黙って割れたコップを拾い集める彼に彼女が声をかける。
「そんなの、看護師さんにやってもらえばいいじゃん」 「そうはいかないよ。君は僕の担当だし」
担当の看護師だってちゃんとついているはずだ、と彼女は心の中で思う。それくらいは彼女だって知っている。 もともと頭の回転が速くて、賢い人間だった。
「担当くらい、替わってもらえばいじゃん。研修医なんでしょ? アンタ。私じゃ、研修にならないよ。それくらい上だってわかってるんじゃないの?」
彼女の担当につけば研修にならない。研修医が研修をしないで何をやる。要するに医者になろうとする道を上司たちが阻んでいるのではないか。彼女はずっとそう思っていた。
「そんなことない。僕はここで良い研修をさせてもらってるよ」
一瞬、彼女の言葉に驚いた。なんて大人なことを言うのだろうと、分かりきったことを言うのだろうと。 だってまだ彼女は十五歳だ。学生。女の子だから花の青春時代とやらを過ごしているはずの年齢。 その子が口にするような言葉ではなかった。先程のは、明らかに。
「何が良い研修よ。わたしみたいなの相手にしてたらライバルたちに遅れとるよ? 試験に合格しなかったからって私のせいにされても困るんだからね」 「はいはい……ぃ…たっ」
これ以上、相手にしても仕方がないので彼は話を切ろうとしたが、ガラスの破片で左の人差し指を刺してしまったことに気がつく。
「は? 何?! どうしたの?」
驚いた彼女がベッドから身を乗り出すと、彼の指先の怪我に気がつく。 慌ててベッドから降りて引き出しから絆創膏を取り出す。
「もう、やだぁ。どっかの餓鬼じゃないんだから…ガラスで怪我なんてそんな漫画みたいなことしないでよー。どうしたらそんな間抜けなことができるかなー」
文句を言いながらも、絆創膏を彼に渡す。優しいんだか、そうじゃないんだかよくわからない。 驚いたのは彼のほうだ。目を大きく開いて彼女のことを凝視する。 それに気がついた彼女は眉間に皺を寄せる。それを見た彼はまた機嫌を損ねたことを知る。
「何よ。早く絆創膏したら? 血、流れてんじゃん」 「いや、なんでこんなもの持ってるのさ」
相変わらず大きい態度の彼女に素朴な疑問を投げつける。 普通、持っているか? 絆創膏なんて。財布の中からとかだったらまだ分かるが引き出しにあった、ということは少なくても家から持ってきたということだ。 わざわざ絆創膏なんか持ってくるか? 家から病院に。
「餓鬼をつるんでるとよく怪我すんのよ」 「君が?」 「馬鹿! あつらが、だっ!」 「そうか。君、年下には人気あったけね」
ふと思い出す、自由時間の風景。彼女はいつも小児科の子供たちと遊んでいる。世話をしてやっている。 入院している子供の中には忙しくて親が見舞いにこられないところも少なくない。そんな寂しい心を彼女は悟ってか、いつも一緒に遊んでいた。 病院中で鬼ごっこしたときは婦長にすごく怒られたらしい。尤も、そのときいなかった彼は聞いたことしかないのだが、その話は。 遊び方こそは何か間違っているような気がするものがあるが、それでも子供たちから笑顔が消えないのは彼女のおかげとも言えるだろう。
「それ嫌味?」
彼女にしてみれば彼らちびっ子たちに「ババア」だの「おばさん」だの悪口を言われてるも同然だ。というか男の子に限ることなんだけど。 女の子は彼女に対して物腰柔らかだし、彼女のそれ相応の態度で接している。 しかし、どう考えても男っ気の多い彼女は女の子と一緒に遊ぶより男の子と一緒に遊んでいるほうが楽しく見える。
「褒めたつもりだけど?」 「あれを人気があるというのか? と、いうかそんなのもうどっちでもいいから早く絆創膏しろ。私があげたんだから」
最後の一言が余分だと思いながら、それに慣れつつある自分がいて、とにかく今は絆創膏をしようと指先に集中する。 思ったよりも上手くいったなぁ、と思いながらごみをごみ箱に捨てる。 彼女は雑巾で床を拭いていた。 ガラスの破片はビニール袋にまとめて入れた。
「まったく、世話のかかる奴ね、アンタも」
床を吹き終わって、手を洗った彼女は、そう言ってベッドに入った。そして、彼に手を差し伸べる。 何のことかさっぱりわからない研修医は首を傾ける。
「どっかの馬鹿にせいで余計な時間くってムカつくから薬飲んでやる」
日本語的に明らかにおかしだろうという言い回しを平気で胸を張って言う彼女。 素直じゃないと思いながらも彼は微笑んで薬を渡す。
「水、新しいの持ってくるから待ってて。脱走なんかしたら今度こそ怒るからね」
そう言って病室を後にする研修医に彼女は脱走という手があったことに気がつかなかった自分の愚かさを知る。
本気で脱走すればよかったと後悔する毒舌家の少女と、そんな少女に振り回される日常に追われる医者の卵の研修医。 この日常はしばらく手放せそうにない。
******************** 研修医と入院少女の物語。つか、この薬が嫌だと言う話は私の話です。 風邪引いたとき病院で貰った薬が粉薬で母上と喧嘩した。それの入院バージョン? でも、相手がお医者様だ[まだ、違う]。 この研修医はまだ小児科に来て三日目くらいの設定でよろしく。日が浅いんだよ。 でも医者ってその言葉自体で萌えるよね。 書いてて楽しかった、このヒロイン。
書いたのは半年くらい前。あー恥ずかしいね、遺作だよ、遺作。コメントも当時のまま。面倒くさいので付け足しとかしません。 一つ言うとしたら、タイトルがめちゃめちゃ適当。
今日は数学のテスト。明日は英語のテスト。土曜日もテスト。
先生はそんなに授業をするのが嫌なのか。高校生活、まだ始まったばかりだというのに、一体テストの範囲はどこですか?[春休み課題の予習ですよー][土曜日はなにやら模試らしい][範囲は小学生からか]。
六時間目は眠くなる。化学好きなのに半分以上寝ていたよ。先生は白衣を着ていた。羨ましいことこの上ない[燈鞠さんはコスプレの趣味はありません]。 同じ学校の理数科の人たち総勢四十一人は強制的に買うそうです。いいなぁA輝さん…。と、いうことでもしかしたら本当に白衣を買ってしまいそうな勢いがあります。 いや、学校じゃぁ着ないし、外出るときも着ないけど、たぶん趣味で家の中で普通に着ていると思う。そしてそれは決してコスプレではないと主張します。
昨日は秀英で、古典と化学をやりました。 古典は兄弟が愛し合う話をやりました[違う]。現代語と古文ってかなり違うことを思い知らされたな、改めて。 たちばな、という文字にも敏感に反応してくれたわたくしの脳。古典は一体何の授業ですか? と、それでも寝ていた人。隣の寺息子に寝顔を見られました。彼の寝顔を見たことがあるのでお互い様ということにしてやったけど、不本意でしかたがない。 所詮人間は睡眠欲には勝てないというのか。
化学は化学でまわりがほとんど同じ学校の理数科の生徒だったため、場違いだと強く感じました。そして女子が少ない。 居心地が悪いことはないのですが、どうにも周りが秀才ばっかりで…。ごめん、私一般人の普通科だから。あなたたちみたいに難関突破したわけじゃないから。理数科の人間はやっぱり頭良いので、近づきにくいと感じる人も多いです。 結局私が言いたいのはおそらく次回から私、あそこにいちゃ駄目な人間だ、ということです。レベルが違う。
昨日はパソ子[デスクトップ]にも太郎[ノートパソコン][正式名称:パソ太郎]にも触れることなく幕を閉じました。あぁ、悲しい。 受験前日にもパソコンで遊んでいた人間です。今年に入ってからおそらく初めてでしょう。パソコンを触らなかった日。
今日は初、自転車登下校でした。でも微妙に雨が降っていました。そんなの気にする性質じゃないですけど。 そして友人らにサクラだと言われたことを話したらA輝さんが「散っちゃう?」みたいなことを、即答してくれました。ちなみに母上も同じことを言った。 どうやら私の人生は短いようです。生命線は長いらしいですが、彼女らが言うならそうでしょう。それだけの権力と発言力と私的地位を持つ人間たちです。
ついでにA輝さんに私信。 イラスト本当にありがとうございました。そして遥かを持って行ったら永泉さんが返ってくると期待しても良いですか?[なんて図々しい] あ、でも頼久さんがいた[お前のでどうしろと][レベルの差を考えろ]。 それと早く続き買うようにするのでしばしお待ちを…っ!!
音楽の時間。スピッツの【空も飛べるはず】をやりました。音が変だと思ったらどうやらもとの音が高くて調を先生が勝手に直したそうです。あぁ、だからか。 調が変わっても気が付かない人は気が付きませんが、とりあえず十年以上ピアノをやっている私には絶対音感なるものがついているのでおかしいことこの上ない。困る。 音楽技術のアンケートみたいなのをやりました。グレードは面倒くさいのでとってません。だってあれ、ヤマハの中だけしか通用しない。 日本音楽検定だかなんだかあるらしいけどよく覚えていないので書かなかった。 ピアノどれくらい弾けますか?みたいな質問にバイエルとかブルグミラーとかソナチネとか書かれていました。レベルわけのためだそうです。 でもなぁ…ソナチネ三、四年前に投げ出しました。やってません。以来、クラッシックの好きな曲しかやってないのでレベルがようわからない、と先生に言ったところ「何が弾ける?」と聞かれ「仔犬のワルツ」と答えたら「じゃぁソナタくらい弾けるでしょう」と簡単に返されました。 え? …ソナタ? はぁ? 無理です。あんなの無理。 と、思いましたが仕方なく了承。どうやら私は議論上ではソナタレベルのものが弾けるらしいですよー[誰に言ってるの]。
ワルツは好きじゃなかったけれど、中学三年間でピアノがめちゃ上手い友人がショパンばかりだったのでいつのまにか私もショパンばかり…。 ちなみに、私。モーツァルトさんとは気が合いません。あの人の曲の感じと私の弾きたいと思う曲の感じが違う。 今度はベートーベンさんとかも試してみたけど、発表会の曲も決めなきゃ…。
ところで、今小学五年生では分数はやるみたいですけど、約分を教わるのは六年生になってからだそうです。いっぺんに教えたほうが身につくと思ううえにそういうのが結構ある。 妹の算数[響きが懐かしい]の教科書を見たところ「こんなの五年生までにやったわー!」と思うものがちらほらどころか出現しすぎ、と突っ込みたい。 文部科学省、何やっていやがる。 ちょうど、小学校六年生のときに転校したので新しい学校で学んだかどうか、ということは比較的明確に覚えているだけに、教科書の薄さとか内容とか腹ただしい。 ゆとり教育は終わったんじゃないの? だいたい大学入試のレベルあがってるのに小学生の教科書薄くしてどうするの? 中学とかもわりと薄くて、高校で一体どれだけの苦労をしろというのか文部科学省。 責任者出て来い。そして高校生の辛さを現役高校生[まだ四日目]が語ってやる。
時間をうまく使うということがどういうことなのか。少なくともテスト前にパソコンを開くことは時間有効には繋がらないなぁ…。でもやりたい。 やりたいこととやらなければならないことが一致しないのはどうにも歯痒い。
一日二十四時間じゃ足りません。
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