回り道のついでに
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隣には男。 これは彼氏ではない。 ここはラブホテル。
ホンダはあたしを愛してると言う。 耳元で。 あたしは愛してる、 とは言わない。 そんな心にもないことは口にしない。
ホンダは浮気相手。 でも今はどちらもあたしの本命ではない。
もう悲しくも寂しくもない。
あの日、 浮気がばれて騒動になったあの3日間に あたしの目から流れて涙は何だったのだろう。
タカに会って 別れを決意して ホンダに電話で告げた。 あたしは泣いた。 ロイヤルホテルの前で。 タカはその電話が終わるのを喫茶店のテラスでずっと待っていて あたしが戻ると両手を握って、 帰ろう。 と言った。 あの日。
それなのに あたしは今何をしているのだろう。
ホンダ 冷たい男。 とても熱い男。 思い通りにするのが巧いね。 これは計算?
別れを告げた次の日に 会社を休んだ。 送られてくるメールの内容は 怖かった。
一緒に居たい・・・ 愛してる・・ 俺のものになって・・ すきだよ・・ お前だけが好き・・ 傍に居て・・ 会いたい・・
怖かった。 ホンダが、 あのいつも明るくて冷静な男が こんなメールを打つのか。 その日ホンダは精神病院のカウンセリングを受けていた。
自分のしたことの恐ろしさに 震えた。
なぜ と思う。
放って置けなくて
そして今日。 あたしには新しく彼氏が出来た。
セックスの最中 絶頂の直前 「おれと付き合おう?」 掠れた声で あたしは頷いてしまった。
ふたり。 あたしにはふたりの彼氏がいることになった。
自分の意思の弱さと 快楽への欲深さと 思いやりの欠如と 灰色の未来に 今はただ眠りたい。
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