DAZZLING BLUE
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2005年07月28日(木) 石と文字が入った。

いまからちょうど一年前、結婚指輪を失くした。
それまでにも一度失くしたことはあったが、奇跡的に見つかったのだ。
ボクシングのグローブの中にあった。
見つかったときはふたりで小躍りした。

だから、「きっとまた見つかる」という根拠の無い確信があった。
マンションの脇、となりの施設の敷地のなか。
頼んでいれてもらって、まばらに草の生えた地面に這いつくばって探した。
結局見つからなかった。
そのまま転勤したから、その場所ともお別れになった。

左手の薬指の根っこのところが「空室」になってから一年、
親指でたまにいじるくせがあったから、そのたびに「無い」
ことをカクニンしては、悲しい気分を味わった。

おりしも夫婦の危機だった。結婚5年目だった。3.5.7は危ないらしい。
ほんとうかなと思っていたら、当たってた。
だから新しいのをすぐに買うという話がでなかった。
胸が悪くなるような口論の日々。やがて伴侶にもはずしてもらった。そろいでつけないと意味がないとくってかかった。自分の指に無くて、相手の指に有るのが、なんだかむしょうに腹立たしかった。
ほんとうに、あんな小さなものがどれだけ、結婚という「約束事」を
支えているのかを思い知らされた。
友人の指に光るそれを見つけるたび、こころのなかにぴゅーぴゅー隙間風が吹いた。

結婚への理想をとくに描いていたわけではないけれど、
もしかしたら少し楽天的すぎたのかもしれないと思うようになった。

夫婦の冬の到来。またの名を大殺界?

こんな人とはもう終わりにしなければ、という考えに行き当たる夜も
幾たびか、重ねた。人生の方向を見失いかけて、ああ、この先は闇だ、と
途方に暮れた。

それでも。
時日がなにかを癒し始めた。一年かけて、だんだんと。

まだへこたれたらだめだ。
これからだ。

先日、近くにオープンしたばかりの大型モールの中にある
ジュエリーショップへ、「代わり」を買いにいった。

失くした指輪が、わたしにとっては、最初で最後の結婚指輪。
二度とあの輝きは戻ってこない。
世界一幸福だった日に買った。役所に書類を提出した日に。
役所で証明写真を撮ったのだった。ふたりでぎゅうぎゅうになって。
そのあとに買ったのだ。近くの有名百貨店で。早くつけたくて文字入れサービスもせずに。婚約指輪なんてものはなかったけど、とにかく幸せだった。

記憶を探りながら、残酷な気持ちでガラス越しに仲良くふたつずつ並んだ指輪たちを眺めた。

ふと、隣で同じ姿勢で指輪を眺めていた伴侶が言った。
「安いのでいいよ。またどうせ失くすから。」

わたしは止めをさされたような気持ちになった。
そうかもしれないけれど、いまこのときに言うな。

新しい指輪は、小さな石つきを選び、裏側に文字を入れてもらった。
互いのアルファベットの頭文字。間にtoをいれて。

結婚を続けるという「意志」(石)は燦然?と輝く。
毎日、炊事をするのにも邪魔にならないというのが売りの、埋め込みタイプの小さな小さなダイヤモンド。
あの頃の瞳の輝きを失った代わりに、光ってみせてくれてるのかな。
































ぐっちー

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