fleur bleue
sora



 曇りガラス

曇りガラスの向こうには、
あなたの姿がぼんやり映る。

はっきりとは見えないけれど、
曇りガラスの窓越しに、
あなたの存在を、
たしかに感じていた。

曇りガラスに手をかざすと、
ゆっくりとあなたも手を伸ばした。

二人の手は、
ガラス越しに重なり合って、
共に響き合っていた。

一枚のガラスをはさんで、
あなたの持つあたたかさが、
伝わってきた。

どうしても、
あなたに会いたくなった私。

曇りガラスを叩き割った。
おそるおそる、叩き割った。
曇りガラスの向こうにいる、
あなたに会えると信じてた。

でも、あなたはどこにもいなかった。
曇りガラスに映っていたのは、
あなたの心そのものだった。

私はあなたの心を砕いた。
そしてあなたを失った。

2006年05月29日(月)
初日 最新 目次 MAIL


↑エンピツ投票ボタン
My追加