月のしずく・星の欠片
春妃。



 興信所


彼は歯科医だったから、自由になるお金が
少しはあった。

とは言え、大学は奨学金を受けたりして
それなりに苦労している。
だから世間一般で言う

「 ぼんぼん 」

とはちょっと違う。



彼はわたしと結婚したかった。
切望していた。
でもわたしはそうでもなかった。
一緒に暮らし始めて、共働きのわたし達は
いくつかのルールを決めたのに
彼はそのルールを守らなかった。


帰宅するとまずパソコンを開く。
テレビをつける。
ゲームを始める。
携帯も始める。


わたしはその横で料理をし、洗濯機を
まわし始める。

正直うんざりだった。


盆と正月には、彼のおばあちゃんの家に
帰省しなければならないルールまであった。


わたしの休みは?


断ると


「 結婚したら、毎年帰るんだよ。 」


これが彼の口癖だった。

冗談じゃない。
彼のママのお宅なら解るけれど、おばあちゃんちには
自分が行きたいだけでしょう。
わたしだって毎回お盆の時期に、
まとまって休みが取れるわけではないんだ。


段々彼との結婚が苦痛になってきた。







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4年も付き合ってきて、何故家族にも
合わせてもらえないのか。

この理由から携帯も盗み見された。


家族に合わせなかったのは、単にわたしと
母の折り合いが悪くて
話し合いが進まなかっただけ。
へそを曲げ、絶対に彼には合わないと言う母。
「 雇われ院長なんて、みっともない。 」
と失礼なことを言う母を彼に合わせたく
なかっただけ。

こんな親

と言いたくなる位、母は支配的で自分勝手な人だから
大事に育てられた彼とは大違い。
恥ずかしくて合わせられなかった。

加えてわたしが結婚に乗り気でなかったこと。

これが1番大きかった。


でも彼は違った。

30万もの大金を注いで、見当違いなことをした。


もうおしまいだと思った。




2012年01月01日(日)
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