「こないだ喫茶店でスパゲティを食べてる女がいてさ。なんとはなしにジッと見てたの」 「気持ち悪いやつだな」 「そしたら気づいたのよ。『食べる』ってのはおもしろいよね。スパゲティをフォークに巻きつけては口に運ぶ、巻きつけては運ぶ、巻きつけては運ぶ、のくり返し。同じ動作を正確に何度も何度もくり返すの。だんだんそういう機械なんじゃないかと思えてきてね」 「ははぁ」 「おれは思わず食べてたドリアを噴き出しそうになったよ」 「つまりおれたちは機械みたいなものに恋をするってわけだ」 「いやぁ、それはどうかな。むしろ、やっぱり機械じゃなかったってことで恋をするんじゃないか?」
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