ニッキ?

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2005年02月16日(水) 哲学?啓蒙?(かもめのジョナサン)

リチャード・バック『かもめのジョナサン』読了。

なるほど、よくできた作品だと思う。
この短さの中に、これだけの内容・展開を盛り込んであって、
けれど圧迫感や性急さといったストレスはない。
ぐいぐいと、それこそ翼が風に乗るように、読み進められる。

チープにこの作品のメッセージを読み解こうとすれば、
生きる意味を求めよ! ってことなんかな。
パート1・2は自己の探求という意味でいいとして、
パート3で群れのかもめ=食うことだけにとらわれている者たちに、
飛ぶということの意味=生きることの意味を教授するという段は、
ちょっと釈然としない。
というか、怖い。

自身の「肉体」は、自分がそう思いこんでいるだけであって、
その認識から解放されれば、なんだってできる(瞬間移動だって)、
という境地に至り、
ついには死んだはずのかもめも蘇るのだけれど、
これはそうとう怖いよ。
何かにとりつかれたようでもある。

哲学めいているし、しかし宗教めいている。
(もちろん、哲学と宗教は密接に関係しているが)


2005年02月03日(木) その考え、間違ってるから

共同通信より「NHK受信料40億を凍結 病院の貸しテレビ業界」
はあ? なんだそれ?

1)全国の病院に貸しテレビを納入している業者の団体が、NHKの不祥事を理由に年間受信料支払いの凍結を決定。だって。
たしかに、いろいろとNHKはお粗末だったけど、それはそれ、これはこれでしょ。
そりゃ、視聴者側が具体的にとれる行動で、
NHKにダメージを与えられるのは受信料不払いだけど、
でも、NHKの番組観ておいて、受信料を払わないってのは、
それってある意味詐欺じゃないのか?
「凍結」なんて言葉でカッコつけてるけど、単なるだだっ子だよ、これじゃ。
不買運動よろしく、「一切NHKは観ません! NHKは映らないテレビ貸し出します!」
ていうなら、わかるけどさ。

2)患者は、自宅と病院の二重払いだと主張してきた。だって。
これもへんだよ。
NHKの契約(受信料)の仕組みはよくしらないけど、
けっして「個人」で契約してるんじゃないよね?
家は家、病院は病院、仕方なかろうが。
二重払いだっていちゃもんつけるんなら、家で家族の人数分払ってから言いやがれ。
まったく。

公共放送だ、品行方正にってのは仕方ないにしても、
そこに不祥事が発覚したからって、訳のわからん難癖つけおってからに。
どいつもこいつも。
わたしも、NHKの「「不祥事」にはとっても不満だけど、
でも、それに乗っかってバカなこと言ったりやったりする連中も、
同じ穴のムジナだと思うよ。


2005年01月25日(火) 世界中で斜に構える女(ももこの世界あっちこっちめぐり)

さくらももこ『ももこの世界あっちこっちめぐり』読了。

さくらももこの本は初めて読んだが、
ああ、まさしくこの人は「まる子」なんだなーという感じ。
「素晴らしい」「すごい」と連発する感激屋さんなわりに、
「眠くなったのでさっさと寝ることにした」「料理はあまりおいしくなかったが、ここは味よりショーがうりなので、そういうものなのだろう」など(うろ覚え)、冷めている。
それはもう、きっぱりはっきり、冷めていて、斜に構えている。
たぶん、本人はそういう意識がなく、正直に感想を述べ、報告をしているだけなのだろうが。

しかし。
ぐだぐだともっともらしく解説されたり(まさにこの読書メモみたいに)、
はたまた必要以上に感動されたり、
あからさまに誰かに恩義があるだろうというほどに「オススメ!」されたり、
というのがなく、あっさりさっぱりとした、
思いつきのままの感想にはとても好感を覚える。

もちろん、さくらももこ氏の文才に負うところも、大きい。


2005年01月21日(金) 「理性」へのアイロニー(蠅の王)

ウイリアム・ゴールディング『蠅の王』読了。

無人島に漂着するたくさんの子供たちの物語。
というと、まず『十五少年漂流記』を思い浮かべるが、こっちはかなり厳しい。
(まともに『十五少年〜』を読んだことがないので、はっきり違うとは言い切れないが)

無人島という極限状態。
そこで少年たちはふたりのリーダーを得る。
表のリーダー「ラーフ」と、裏のリーダー「ジャック」。
これはそのまま、
烽火(理性的に救出を求める)VS豚狩り(野生化してその地に生きる)
という構図になっていく。
誰もが内面に持っている「負」の部分のことを、
「獣」と呼んでごまかし、けれど恐怖に飲み込まれていく少年たち。
ゆがんでいく関係。
そして、続く悲劇。
理性派の敗北。


イギリスの小説らしく、ラーフたちはたびたび、
「ここに大人がいたらなあ、理性的に解決するだろうに」
とぼやき、最後に救出にきた大人たちは、
「きみもイギリスの子供ならば、きちんとしなくちゃ」
というようなことをいう(うろ覚え)。

島での破滅的な出来事は、異様なようでいて、
実はすべて、この人間社会の縮図なのだ。
だから、この何度も出てくる「大人」への羨望は、
痛烈なアイロニーになっていて、
思わず苦笑してしまうほど、やるせない気持ちになる。


2005年01月18日(火) 3巻目にしてようやく試合(バッテリーIII)

あさのあつこ『バッテリーIII』読了。

わくわくする、面白い。
レギュラー対1年生で、1年生が勝っちゃうとか、
野球部の未来をかけて強豪チームと試合するとか(試合はこれからだが)、
ネタとしては手あかがついているけれど、
なかなかどうして、純粋に興奮できる。

「スポ根」ものは、漫画ではいくつも読んでいるけれど、
小説では初めてかもしれない。
文章だけで、これだけ盛り上げ、イメージさせるというのは、
なかなかどうしてすごいことだ。
この太陽と土と汗と、ボールとバットとグラブのにおいを、
形は違っても多少なりともわたしが知っているから、
余計に興奮するのかもしれない。

天才「原田巧」を軸に回ってきた物語、
このあとは凡人「永倉豪」の番。
ますます面白くなってきた。


鳥乃 |MAILHomePage

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