大きな飛行蛸が襲ってくる。足の間の膜を目一杯広げて滑空する。普段はカラスや風呂敷やお地蔵さんに擬態している。私達は映画館の廃墟に逃げ込んだ。小さいやつが追ってくる。飛行蛸は水とCO2に弱い。座席の中に逃げた飛行蛸をバールで引き出してCO2で殺そうと格闘する。
この世界では身体障害者はサイボーグ化されて前線に送られてしまう。四肢欠損の者は下半身をキャタピラにされ腕にはガトリングガンを装着されていた。脳性麻痺の者はパワードスーツに身を包んでいた。私もサイボーグ化されてサイボーグ部隊の一員となっている。
私は中学生だった。昔の木造家屋に住んでいる。居間の畳が抜け毛だらけで汚い。誰も掃除しないので仕方なく掃除機をかけた。若い親父が帰ってきた。二人で畳の上で相撲をとる。私は内股すかしで簡単に勝ってしまった。親父はきっとわざと負けたんだと思った。つまらない気持ちになった。「俺は四十過ぎてからはわざと負けるようにしているんだ」と親父。それが親父流の優しさなのかなぁ。。。と不思議に思った。
私は工場の建ち並ぶ街を徘徊していた。街中が科学薬品のような刺激臭で満たされていた。とても耐えられない。一件の町工場に入ってみた。そこには鉛で出来た風呂のようなものが有った。小さな兵隊さん達が風呂の中に整列する。私もそれに混じった。相変わらず刺激臭が脳天まで染みる。風呂にはドボドボと濃硫酸が注がれていった。肌が焼けるように熱い。しかし風呂から出てはいけない決まりなので私は苦痛に耐えた。皮膚が剥がれていく。喫水線が頭を越えた。今度は息が出来ない。しかしあの刺激臭から解放されて幸せだった。
ある夏の午後、田舎の一本道で昼寝をしていた。大きく口を開けていたので知らない内に蜂が口の中に巣を作ってしまった。息苦しさと頭に響く羽音で目が覚めた私は恐怖で気が狂いそうになった。
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