こんな一日でした。
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今年、我が家のトイレに大量の蜘蛛の子が発生した。その数たるや、恐ろしい。アンパンの芥子の実のような大きさで、昼間は散っていて、夜になると一カ所に集まっていた。
その蜘蛛の子達が、この夏、大活躍中である。家のあちこちに、大きくなった蜘蛛が巣を作り、どんどん蠅を捕獲している。蜘蛛はメタリックでまん丸な腹を持ち、針のような足をしている。SF映画の宇宙船のような姿だ。 その蜘蛛が、あっっっという間に蠅を捕まえて、鮮やかにぐるぐる糸を巻き、悠然と蠅の体液を吸っている。怖い。本当に、怖い。
我が家はあちこち傾いているので、全ての戸が閉まりきらず、隙間が開いている。その上、我が家には、なんと網戸がない。虫はいくらでも入ってくる。 夜になると、電気や白い色の部分に小さな虫が集まる。そして、一晩で息絶えてしまう。朝になると、蛍光灯の下などにちいさな虫の死骸がたくさん積もっている。困るのは、絵の上にも積もることだ。胡粉の辺りがとくにひどい。
蜘蛛は益虫だ、と昔から聞くが、ちっとも好ましい虫ではなく、子供の頃は毛虫と同じ害虫のような気がして仕方がなかった。しかし、今年になって、蠅を狩っていくその冷酷なハンターぶりが、実に頼もしく、心から「蜘蛛は益虫だ」と認識するにいたった。今時、知識としてではなく、実体験から、心の底から、虫の益について理解するなんてそうそうできない事じゃないかな、と思う。
頼りになる蜘蛛たち。惚れ惚れとするその活躍を見て、しかし、私は蜘蛛を嫌いになりそうである。怖い。本当に、本当に、怖すぎる。
夜中、寝苦しくて目が覚める。3時だ。 眠ろうと思っても、寝付けなくていやな時間を過ごした上に、重たっ苦しい朝が来るに決まっているんだ。ええぃ、だったら…と、起きてみた。 時間がないのだから、眠れないならこれ幸いに制作をすれば良いだけのことだ。昨日発売になったばかりの、小田さんのアルバムをかけてみる。夜中に、思春期の少女のように、優しげなラブソングを聴くのも良いものです。
…と、そこに我が家の愛娘犬が起きてきた。不思議そうに私を見て「お布団は?」と言っている。私が絵を描き始めたので、彼女は縁側から明けゆくお外を眺めたり、てこてこ来て、絵のそばに寝ころび、見るともなく私を見ている。
CD一枚分とちょっと、制作したらやっと眠る気になった。私が筆を洗うと、愛娘犬は、ちょこんと座って、やや難しい顔で様子を伺っている。私が寝室に戻ろうとしたら、先回りして「お布団でしょ」と、笑う。「お布団だよ」と答えると、ちょっとお尻をもりっとさせて「♪」と弾む。私のベットに潜り込んで私の腕の下に頭を押しつけている。
彼女なりに、共に何かした気持ちでいっぱいらしい。 なんとなく、ありがとう、と思う。
先日、地元新聞の取材を受けた。アトリエで、制作中の「ふり」をした私を取り上げてくれた。当日まで、てっきり作品中心の扱いだと思ったので、スッピン&ユニクロコーディネートでありました。 「アトリエの床はコンパネです。床が抜けたので自分で貼りました。天井にビニールシートを貼っているのは、雨漏りがするからではなくて、冬寒すぎて、ストーブをいくら炊いても熱が逃げるので、天井を低くしたんです。」などと説明していると、カメラマンさんが「あ、画家さんは結構こういう仕事部屋の方、多いですよ。ガレージの隅とか」と…。 ええ、まぁ、実際、ガレージみたいなものです。
記事は河北新報、宮城県内版6月9日夕刊と、県外版6月10日朝刊に載ります。県内にお住まいで、朝刊のみ購読されている方には届かないそうです。
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