恋愛小説を読んでじぶんのなかに「乙女」を取り戻そうとするのはちょっと卑怯な気もする。 けれど、そんな単純で甘酸っぱい刺激に飢えているというのは事実、か。 仕方ないかな。
齢三十一、 結婚して四年、 子もなく気楽に働く日々。
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小さなお話を書いては自己満足に浸っていた日々ももはや遠く。 遠くへ来たものだ。いや、と言うより・・・
――――実は『過去の自分』を『他人』のようにしか回想できない。 この癖は、これまで生きてきたどの時点についても同じだ。
自分が映った写真を見ても自分を探すのに時間がかかる。 自分の顔と姿を『自己』として捉えられないらしい。 写真からは何も思い出せない。おそらく…「自分の視点」でないからだろう。
私は私の見た世界で過去を位置付けている。 「見た夢」や「読んだ小説」や「見た映画」が収納される記憶部分と近い。 それは誰しもに当てはまることなのだろうか? 一部の人間特有のことなのだろうか?
少なくともQは別人種だと思う。
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