言葉に表してしまうのが怖い。 その瞬間に本物になってしまいそうで。 逃れられなくなってしまいそうで。 ずっと、感じ続けてきたジンクス。 君は、こじ付けだと笑うだろうか。 こんな僕が、笑い飛ばす事も出来ずにいるのに。 でも出来るなら君が笑ってくれたら良い。 僕は、そう思っているんだ。 そしたら、君が笑ってくれたら、あるいは。 本当に笑い飛ばせるかも知れないだろ? 全てを招いているのは、僕の方なのかな。 あまりにも、捕らわれ過ぎたのかな。 身動き一つ取れなくなってしまったよ。 まるで、意志を持っているかのように。 僕に纏わり付いて離れない。 『それ』は音も無く地を這い、僕の背後に迫る。 油断すると足元から崩される。 ぬるり、纏わるのは空気より重い。 タールにも何処となく似ている。 口から入り、喉を焼こうとする。 吐き出そうとすると既に内は侵されていて。 肺も、心臓も、ゆるゆると捕らわれていて。 奥から染み出した『それ』が外と交わって。 『それ』と『僕』が交わって。 僕は声も無く打ちひしがれる。 それは絶望すら飲み込み、くつり、嗤う。 大切なものは、失ってから気付く。 それは本当なのかな。 だとしたら、僕の大切なものは偽物なのかな。 大切さに気付いた途端に失ってしまう。 砂の城や水面の泡沫に等しく消えてしまう。 それは、偽物なのかな。 僕が何かを大切に想うのは、許されない事なのかな。
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