セキセイインコ ゴン助の精巣腫瘍闘病記録

INDEXBACK NEXT


2010年11月10日(水) ゴンやんと漫画



ゴン助の後日談です。


先代ゴン助が亡くなって7年経ってしまったのが夢のようです。
あれからすぐ新しい雛を飼い、今元気に暮らしています。
このぶんだと先代より長生きしてくれそうです。

ところでその先代ゴン助の看病をしていた頃、私は漫画の持ち込みをしておりました。
イラスト仕事は動物ものでずっとやっていたのですが、漫画(ストーリー)では
まだプロデビューしていませんでした。


当時、小学館の編集者の方から、新人賞で選考落ちしたものを見て
がんばってみるなら面倒を見ますよ、と声をかけて頂いて
せっせとネームを作っては見てもらう日々でもありました。
ストーリー漫画はとても難しく何度も直しては描く繰り返しでした。
年齢も30過ぎでここでやれないともう体力が厳しくなると
真面目にがんばっておりました。

そんな時、ゴン助は精巣腫瘍の宣告を受けました。
そのせいではありませんが、私は作っていた作品にゴン助を登場させていました。
その時はまだゴン助の病気に気付いていなかったのです。
結局、作品の仕上げ段階に入った頃、ゴン助は亡くなり
涙が原稿を濡らさないよう姿勢に気を付けながら作業した事を覚えています。


最初は原稿にペンを入れる度、ゴン助を思い出して辛かったのですが
だんだん、そうだ、ここにゴン助を残してやろう、と思うようになっていました。
まだ投稿段階だったのでスケジュールを調整し損ねてラストで一枚飛ばして
締め切りに間に合わせたのですが、それがそのままデビュー作となりました。
(そのせいで編集部の方が原稿を一枚紛失したんじゃないかと青くなって探しまわった、と
聞かされ、ド新人の癖にご迷惑をかけてしまったと反省しております。)



そして、夏。


ゴン助は印刷された本の中で生きていました。
選んで下さった先生のコメントは今もよく覚えています。
特にゴン助モデルのキャラがいきいきとしていた、と書かれておりました。
大きな腫瘍を体に持って苦しみながら毎日生き続けた姿が
私にとって教科書となったのだと思っています。


同時にその事がゴン助に永遠の命を与えたように思えて
悲しみや寂しさも消えていきました。
その後の漫画活動はなかなか順調とは行きませんでしたが
担当下さった方などには恵まれ、勉強はずっと続ける事ができ、最近では
ゲバラ漫画の国内版の文庫本も出す事が出来ました。
流石にゲバラでゴン助は出ませんが、やはりどう生きて死んで行ったか描いていると
共通するものがあったように思います。


心に残る事、それこそが一番人や生き物にとって良い事なんだろうなと思います。
悲しみも苦しみも喜びもすべてそれはとても良い事だと思っています。


また機会があれば生き物と人など物語を描いてみたいと思っています。



嶋野千恵



初出 小学館 ビッグコミック増刊号 

『耳に残るは…』








blue |HomePage

My追加