読書日記

2003年02月10日(月) 津野海太郎『歩く書物 ブックマンが見た夢』(リブロポート)

津野海太郎『歩く書物 ブックマンが見た夢』(リブロポート 1300円 1986年5月25日第1刷発行 p278)

もともと本や読書に関する本を読むのが好きだったが、最近これといったターゲットがなく寂しかったところに登場したのがこの筆者である。名前の何冊かの著書は知っていたのだから、再発見だろうか。
この本は17年前の本なので古い。レイ・ブラッドベリの『華氏451度』や『刺青の男』について力を入れて語っているなど時代の違いを感じる。しかし、新しいというか、一貫しているというか、全く古びていない。
だいたいレイ・ブラッドベリご本人自体がまだ現役の作家として新作が邦訳されているではないか。
あの坪内逍遥を語った本がこの著者の最新刊である。
今最も深くて濃い、本と本に関わった人についての語り部、津野海太郎の本が一番面白い。



2003年02月09日(日) 津野海太郎『読書欲編集欲』(晶文社)

津野海太郎『読書欲編集欲』(晶文社 1900円2001年12月15日初版 p254)

『季刊・本とコンピュタ』(大日本印刷)の総合編集長を務める著者のエッセイ集。
本のこと、雑誌のこと、編集のこと、自らのこと、読書のことについて本当によく考えているなと感心してしまうが、人間についてもっとも深くかつ強く書いていることには感動を覚える。
本や雑誌以上にそれに関わった人間たちが好きなようである。
森銑三という先達がいるがその衣鉢を継ぐ語り部の語りとして抜群に面白かった。
今江祥智、小野二郎、片岡義男、植草甚一、羽仁もと子など登場。



2003年02月08日(土) 光瀬龍『消えた神の顔』(ハヤカワ文庫 )

光瀬龍『消えた神の顔』(ハヤカワ文庫 560円1979年6月30日発行 1996年4月30日五刷 p331)

重厚な長編型SF作家の多彩な語り口が楽しめる短編集。全十五編。
「アトランティスは、いま」「飛加藤を斬れ!」「二十年前、新宿で」「ボレロ一九九一」「それでは次の問題」「錆びた雨」「人は情によって死ぬ」「それは元禄十五年か、それとも十六年か」「同業者」「天の虚舟忌記(あまのうつろぶねいみき)」「不良品」「乗客」「いまひとたびの」「私のUFO」「消えた神の顔」
本格SF風の作品やSF時代小説はもちろん、皮肉な結末のショートショートまであるお徳用的作品集。




2003年02月07日(金) コニー・ウィリス(訳=大森望)『航路(下)』(ソニー・マガジンズ)

コニー・ウィリス(訳=大森望)『航路(下)』(ソニー・マガジンズ 1800円22002年10月10日初版第1刷発行 10月24日第2刷発行p434)

下巻は一気読みできた。
主人公ジョアンナが、さらに思いがけない人物との出会いによって謎の真相にぐぐっと接近するが・・・・・・というわけで、さらに七転八倒、七転び八起きのドタバタ騒ぎの果てにえーっという驚愕の展開になる。
そのとき、キュートなリチャードのとった行動は、
泣ける。
下巻は、感動てんこもり、といったら嘘つきになるが、ある部分からはじっくり確実に読んでいくのがよい。
結末は、奇妙もしくは驚き。
村上春樹の『海辺のカフカ』(新潮社)よりもドライだが、結末を比較すると『航路』の方がウエットかもしれない。
単純に不思議な感動があることとその絵柄がセンス・オブ・ワンダーそのものだから。手抜きなしの「本格」である。


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