読書日記

2003年02月18日(火) 佐伯一麦『一輪』(新潮社400)

佐伯一麦『一輪』(新潮社400円1996年3月1日発行P185解説=磯貝さやか)
「一輪」は100ページ程度。「ポートレート」が65ページ程度。中編2編収録。清楚な風俗嬢と電気工の「おれ」とのすれ違いの純愛もの「一輪」と離婚する風俗嬢「私」の意気地を描く「ポートレート」の二作である。
解説を読むと私小説風らしいが、読んでいる最中には思いもしなかった。「一輪」はラストがしゃれているが、意外なほど特徴のない小説で、題材以外は端正な落ち着いた作品である。
後からじわじわ機になってくるような渋い現代の恋愛小説。結局、これも不思議な感じのする本といことになる。この新潮文庫は絶版らしい。




2003年02月17日(月) 神蔵美子『たまもの』(筑摩書房)

神蔵美子『たまもの』(筑摩書房2800円2002年4月25日初版第1刷発行P206)
写真集もしくはフォト長編エッセイというのでしょうか。それとも写真付き赤裸々日記というのでしょうか。文筆家の坪内祐三のもとを離れてこれも文筆家の末井昭のもとに走った女性の愛の自分日記写真集。不思議な本です。カラー写真よりもモノクロ写真の方がいろいろな意味で怖くリアルです。
昨年、とても評判でした。




2003年02月16日(日) 山村修『遅読のすすめ』(新潮社)

山村修『遅読のすすめ』(新潮社1300円発行2002年10月25日p173)
新刊本病に罹患している現代日本でゆっくり読んだり、すでに一度ならず読んだ本を読み直したりするのは邪道というより概念としてすでに存在していないことになっている。
本に対する分裂的症候群に陥っている人々への、この本は一つの処方箋である。
本が何冊あろうとも心静かに好きな本をじっくり読み、好みの文章を味わう。
読書の基本を確認できた。
夏目漱石から吉田健一を経て倉田卓次・北村薫まで著者の心遣いはゆきとどいている。



2003年02月15日(土) 鹿島茂『それでも古書を買いました』(白水社)

鹿島茂『それでも古書を買いました』(白水社1900円2003年1月25日発行p242)

19世紀のフランス文学研究者はおおむね愛書家でコレクターなのだろうか。日本人がいくらお金を持っているからといってパリへ出かけ古書のオークションに加わるというのは相当の覚悟がいると思われるが、著者は何度か決断して古書を入手している。
著者のコレクター魂が横溢する抱腹絶倒の古書(メインはパリの古書店)をめぐるエッセイ集である。
内容はもちろんだが、文章がこれこそ「すてき」というべきで巧みである。たとえば、これ。
「パリの古書店に猫の時間が流れる」(p82)
他の者には書けない説得力と含味のある文章をこの著者はこともなげに書いているように見える。
後半の、蒐集した挿絵本を20冊ほど紹介する「こんな本も買いました」部分は挿絵付きで眼福を感じる。


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