全八編からなるこの作品集は貴重と
2003年05月11日(日) |
小林信彦『にっちもさっちも』など |
5月4日(日曜日) イアン・ランキン(訳=延原泰子)『血の流れるままに<リーバス警部シリーズ>』(早川書房ポケットミステリブック1400円) シリーズ7作目だが、その前の6作品は邦訳されていないようなのでここから読むことにした。とりあえず29ページまで読む。誘拐犯を追跡する場面から始まり、自動車事故や重いがけない自殺の場面などが続き、展開が予想よりも早い。
佐伯泰英『悲恋(密命・尾張柳生剣)』(祥伝社文庫630円) 密命シリーズ最新の第8作。金杉惣三郎の娘みわが不良武士たちに拐かされそうになるところを通りかかった若い侍に助けられる場面がそうそうに出てきて金杉家に肩入れしている当方としては実に落ち着かない始まりだった。最近気弱になってきたせいか可哀相な展開を避ける傾向がある。
小林信彦『にっちもさっちも(人生は五十一から)』(文藝春秋1476円) 半分ほど読む。このエッセイ集も5冊目。辛口だが、世の中の方がはるかに「痛み」を伴う辛口社会で、弱り目にたたり目状態を愚痴る小林信彦氏の文章を楽しくは、読めない、ような気もしてきて、うーむとうなる。 5月5日(月曜日) 『にっちもさっちも』合間を見て拾い読みをつづけた。TBSラジオ、獅子文六、今の日本経済や政治の話など印象に残る。
5月6日(火曜日) 『にっちもさっちも』読み終わる。獅子文六の再評価、TBSラジオ「アクセス」の高評価、大塚寧々と米倉涼子への注目などが記憶に残った。 「卓球レポート」 3、4、5月号をとりよせるも、武術家甲野善紀氏に身体の動きを学ぶ、動きのヒントを得るという特集は次の6月号であることが判明。ややがっかり。 椎名誠のエッセイ及び小説がまた読みたくなってきた。忘れた頃に椎名誠が帰ってくる。文春文庫を二冊購入。 長田弘『本という不思議』(みすず書房)をちょっと読むことにする。
5月7日(水曜日) 『本という不思議』はじめの四章ほど読む。さらに中井久夫『清陰星雨』を二章ほど。時評と内省がかみあって味わいが有る。
5月8日(木曜日) 池宮彰一郎『本能寺(上)』(新潮社千六百円)を読み始める。NHKの『利家とまつ』宮本昌孝の『ふたり道三』を思い出しながら読む。特に『ふたり道三』の続きのような錯覚を覚える。40ページほど。
ネビル・シュート『パイド・パイパー(自由への越境)』(創元推理文庫700円)も読み始める。これも読み始めると中断できにくい魅力を持っている。とはいっても、取っかかりの部分を読んだだけ。 その他何冊か冒頭1、2ページのみ読んでみて、挫折。
5月9日(金曜日) 今日は運動の日になり、本に触らず。ただ小林信彦の『人生は五十一から』の既刊4冊をもう一度読みたくなり、さらに獅子文六の小説にも気持ちが向かい始めている。ミーハーの特性である。
5月10日(土曜日) 高島規郎『卓球戦術ノート』(卓球王国1300円)を熟読的拾い読み。再読に近いが読みはじめるとつい熱が入ってしまう。 結局、今週読了したのは『にっちもさっちも』一冊。読む本よりも買う本の方が多すぎるせいか。読む時間よりも本屋の書棚の前に立っている時間の方が明らかに長い。その時間を読書に回せないこの身が悲しい。なんでだろう。
A 今週目を通した本や文章など。
雑誌 イ 『季刊 本とコンピュタ 2003春号』(トランスアート 1500円) ロ 『本の雑誌 2003年5月号 自転車キコキコ麦笛号』特集=名セリフ大博覧会!(本の雑誌社530円) ハ 『SFマガジン2003年6月号』スプロール・フィクション特集拡がりゆく小説(早川書房890円)
文庫本 ニ 岩合光昭・岩合日出子『海ちゃん(ある猫の物語)』(新潮社560円) ホ 安藤哲也『本屋はサイコー!(本を売る仕事はこんなに面白い)』(新潮社OH!文庫486円) ヘ 斎藤美奈子『読者は踊る』(文春文庫676円)
単行本 ト 覚慶悟『よろしく、うつ病(闘病者から「いのちがけ」のメッセージ)』(彩流社1400円)
B 拾い読み程度の本など。 チ 野村正樹『ビジネスマンのための知的時間術(「自分時間」を豊かにする101のヒント)』(PHP文庫500円) リ R・シャパード/ジェームズ・トーマス編(訳=村上春樹/小川高義)『SUDDEN FICTION(超短編小説70)』(文春文庫690円) ヌ ジョージ・RR・マーティン(訳=岡部宏之)『七王国の玉座(下)』(早川書房2800円)
この他、めぼしい出版社の宣伝誌も見ているがすぐに思い出せないのでカット。 イとロはほとんど読んだ。特にイは無駄がなく読み所満載。津野海太郎の本を読んでいるうちにちゃんと読みたくなり定期購読することにした1冊目。もちろんロも無駄がない。読者を楽しませる手管を目一杯ふるう執筆者ばかりで、興味のわかない分野の話でも読んでみると感心することになる。巻頭の「今月の1冊」の浜本発行人から始まる、下森真澄VS柴口育子・田口俊樹・新保博久・青木逸美・亀和田武の執筆陣は充実と感動の二言。 二は猫の海ちゃんの生活と意見を見事に表現した写真と文章に見とれるばかり。 ハは、特集の短編五編は全部読んだ。まるでミステリ・マガジンのお株を奪う企画。 アーサー・ブラッドフォード「ドッグズ」ポール・パーク「ブレイクスルー」ケリー・リンク「私の友人はたいてい三分の二が水でできている」は現代文学、ブルース・ホランド・ロジャース「死んだ少年はあなたの窓辺に」とニール・ゲイマン「十月が椅子に座る」が幻想文学で、SFマガジンよりもミステリ・マガジンの方がふさわしかった。監修者の小川隆の解説は充実度が高く、目配りが利き、読ませる。 他に、初登場作家の林巧「栄曜邸の娘の魂が抜けた話」は中国風幻想物。主人公の阿婪の特徴や他の登場人物が興味を引く。設定の面白さがある。 ホはその元気さがうらやましい。 ヘは驚きの一冊。辛口とはこれだ!のエッセイ風書評。守備範囲もしくは攻撃範囲が広く、すべて的を射ているので反論できない。最近、同じような趣旨の本を出しているが、恐れ多くてすぐには読む気にはなれない。その踊りが融通無碍で感心しきりの本だった。 トは、題名の中にある通り「うつ病」についての本。うつ病になり、はかり知れない苦しみを味わった著者の半生と意見のしょである。意外にもその話がこころにずんずんしみ通ってくるような気がするのは、誰もが抱えている問題(意識)とぴったり合うからだろうか。特殊なことを語っているはずなのに、生きている人間であれば多分だれにでも覚えがあることを語っているのだ。読んでいる自分自身についての確認の本のようになってしまった。 チとリは、まだ拾い読みの段階。もう読まない可能性もある。 ヌは、一カ月以上も前に上巻を一気に読んでいるのに、まだ読み終わっていない。読もうと思えばいつでも読める状態を楽しんでいる、わけでもない。このシリーズの続編が今年中に出るはずもないからいくら粘っても仕方がない、ね。
日記の更新が毎日はできない状態になったので一週間分まとめることにした。最近は拾い読みが主で一冊読み通す気力と器量が失せてしまったのでそれでもきついがただでさえ弱い知力がさらに衰え縮んでいかぬようにするための便法と考えたい。
2003年04月11日(金) |
『七王国の玉座』下巻を少しずつ。 |
上巻を読んでからおよそ1カ月。登場人物を把握できなくなっている。思い出しつつ読んでいる。 短いエピソードの連続だが、緊張を呼ぶ山場の場面が必ずあるので非常に面白く読める。
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