読書日記

2004年09月05日(日) 中野孝次・編『清貧の生きかた』ちくま文庫

中野孝次・編『清貧の生きかた』はアンソロジーである。誰のどういう文章を選んだかに興味が移る。
水上勉、坂村真民、小崎登明、高橋延清、志村ふくみ、幸田文、今西錦司、山尾三省、吉野せい、空中斎光甫、鴨長明、吉田兼好、解良栄重、三木卓、安岡章太郎、鈴木大拙、中村達也の十七人の文章が収めてある。
幸田文は『崩れ』の文章である。
他の方の文章の出典はもちろん巻末に記載あり、だがそれはまた徐々に後日。
巻末の解説は、松下竜一。題は「清貧には遠いビンボーながら」であった。
ちくま文庫、1997年1月23日第1刷発行。



2004年09月04日(土) マーヴィン・ピーク『タイタス・グローン』創元推理文庫

やっと読み終わった。およそ1ヶ月は読み継いできて最後の646頁に至った。「ゴーメン・ガースト」三部作の第一部はゴーメン・ガースト城を統べるグローン伯爵家に待望の世継ぎタイタスが誕生し、ある陰謀の予期せざる結果として七十七代城主となるまでの約一年間に起きたさまざまな出来事と関わった個性的な人物たちと鳥や猫をあますところなく描き尽くした。
視覚的に豊かなイメージ、つまり優れた映像の数々は超弩級である。
人工的な映像美を追い求める現代にこそふさわしい。
個性的というよりもいっそ異常ともいうべき登場人物たちが超巨大な断崖・巌のゴーメン・ガースト城の中と周辺でうごめく人間ドラマの方も禁断の味わいに満ちている。
『指輪物語』とは全く異なる次元の幻想物語はとんでもない幻想世界でのハードな物語はもちろん傑作だった。
1985年4月19日初版を何回かの引っ越しにも見失うことなく持ち歩き、今回やっと読み終えることができ、とてもうれしい。
最近気がついたのはこの『タイタス・グローン』をほかに三冊持っていることだった。長の年月の途中で迷宮にさまよい、第一部と第二部の題名の区別がつかなくなったのだろう。第二部の『ゴーメン・ガースト』のつもりで買ったのだ。
肝腎の次に読むべきその『ゴーメン・ガースト』が見当たらない。しばし物置をさまよったが発見できず。第三部の『タイタス・アローン』は二冊見つけた。
『ゴーメン・ガースト』を読むのはいつのことやら。

なお、巻末の解説は「ピークあるいは幻想からの目覚め」と題して当然のごとく、荒俣宏が書いている。
翻訳者はこれももちろん、浅羽莢子(あさばさやこ)である。

著者「マーヴィン・ピ−ク」について

1911年7月9日、中国の江西省に生まれる。1922年にイギリスに帰る。
1931年、20歳でロンドンの画廊で個展を開く。
1939年『スローターボード船長』1940年『木馬に騎って』を出版。
1946年『タイタス・グローン』執筆。出版のあてはなかったが、たまたま談話したグレアム・グリーンの仲介によって、グリーンが影響力を持つ出版社エール&スポッツウッドから刊行される。
1968年11月、病死。
1969年4月、『タイタス・グローン』のラジオドラマ放送。ピークと『ゴーメン・ガースト』は知られ始める。(*荒俣宏の解説に基づく。これでは簡単すぎるので徐々に補足していきたい。)

翻訳者「浅羽莢子」について

東京大学文学部卒業、英米文学翻訳家。アン・マキャフリィ、キャンプ&プラット、タニス・リー、ヴィンジなど翻訳書多数。(*本の訳者紹介に基づく。ここも徐々に補足したい。)



2004年09月03日(金) 藤田紘一郎『水の健康学』新潮選書

水を飲んで健康になるための本。今の塩素入り水道水ではもちろんだめ。水を選んで飲んで老化や心筋梗塞などを予防できるという。
たとえば、目覚めに冷たい水を一杯飲むことで健康状態がわかる。その水がおいしく感じられれば健康だと言えるし、その水との相性もよいということになる。
自分の体に合う水を選んで飲むことが大事だと著者は考える。
積極的に作戦を立てて計画的に水を飲み、体を改善してゆくためのウォーター・レシピが19例もついて1000円(税別)はお徳用。
そういえば米のご飯も使う水によって味わいが大きく違ってくる。米の品種はもちろん、炊飯用の道具やとぎ方、水の量にも左右されるが何よりもどんな水を使うかが重要なのだ。
人間も米とたいして変わらないと考えれば人間の中身も飲む水の種類によって違ってくるとも言える。

著者「藤田紘一郎」について

1939年、中国・旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業、東京大学医学系大学修了。金沢医科大学教授、長崎大学教授を経て、1987年、東京医科歯科大学医学部教授。現在(2004年)は同大学院教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。『原始人健康学』『パラサイトの教え』(新潮社)『笑うカイチュウ』『ウッふん』(講談社)『ニッポン「亜熱帯」化宣言』(中央公論社)、『日本人の清潔がアブナイ』(小学館)など著者多数。(*『水の健康学』のカバー記述による**『パラサイトの教え』は新潮文庫に入りました。寄生虫学者としての面目躍如の傑作長編面白やがてかなしき警告本です。)



2004年09月02日(木) 浦沢直樹『モンスター』小学館

職業・医師のキンブルと追跡者ジラード警部の物語『逃亡者』のサイコパス版。全18巻はあまりにも長い。長いところまで似ている。まさに終わりなき逃亡の旅である。長い道のりの途中で愛すべき相棒ができたり、心温まる人とのふれあいがあったりでほっと一息つくことができる。事件が起きると非情のライセンスとばかり感情移入無用で人命がうしなわれていく。
一気に読むしかなかったが、もう一度進んでは手にとることはないような気がする。忘れたころに読めばきっとまた最後まで読むだろうけれど。
煮え切らない結論。


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