2004年09月15日(水) |
未來社『未来』2004年9月号、入手 |
未來社『未来』2004年9月号には書店の話題が三つ。 向井透史の連載「開店まで 早稲田古書店街外史4 ブックス・アルト」(P12〜13) 新連載「書店のABC 1」は 和泉仁士の「うれしい接客」(P30〜31) 西谷能英の連載「未来の窓90 青山BCは再生できるのか」(P42〜43)
異なる視点からの書店論として注目。別段、特集しているわけではないのに良い感じ。
大宮勘一郎の連載「大学の余白/余白の大学 4」の今回の題名「魂は二つか、一つか?」を見て思い出したのは、萩原朔太郎の詩「こころ」の一節である。
「 こころは二人の旅びと されど道づれのたえて物言ふことのなければ わがこころはいつもかくさびしきなり。 」
この連載の内容とはほとんど関わらないが。
2004年09月14日(火) |
大西巨人『神聖喜劇 第二巻』(光文社文庫)読了 |
大西巨人『神聖喜劇 第二巻』(光文社文庫)をやっと読んだ。 第三部 運命の章 第一 神神の罠 第二 十一月の夜の媾曳 第三 「匹夫モ志ヲ奪フ可カラズ」 第四部 伝承の章 第一 暗影 第二 道 第三 縮図 第四 対馬風流滑稽譚 解説 阿部和重
第一巻の第一部、第二部が重厚さで売ったに対して、この巻は意外にも軽い。 作中の大前田軍曹の言葉ではないが、軍隊と女の関係はないとは言わせないぞ、とばかりにそちら方面の話題満載である。
読み終えるまで一ヶ月以上かかり遅々として進まずというあせりも多少はあったが、主人公の東堂以外の人物の不可思議な人間的魅力のおかげもあり、挫折せずに読むことができた。
第一巻の冒頭の文章を初めて読んだときにはとうていうまくつきあえそうもないと中断・挫折を予感していたのに、著者の文章・表現力の充実と多彩さに脱帽した。
『本の雑誌』今月号(2004年10月号)に津野海太郎が「サブカルチャー創世記ー本と演劇の20年」という連載の中で今回は「新日本文学会にはいる」の見出しで4頁の回想録を書いている。その4頁目(P73上段)に大西巨人と『神聖喜劇』について次のような言及がある。 「『神聖喜劇』連載はやっと三十回をこえたあたり。したがって、もう三年近くつづいている勘定になるが、一回の枚数が極端にすくなく、しかもあいだに休載がはさまるので、なかなか先にすすまない。」
この「なかなか先にすすまない。」というのは大西巨人の執筆姿勢につながるだけでなく、読み手の姿勢や意欲、感性にも強く関わる重要な特色である。
阿部和重の解説は簡にして要を得た紹介文でうまい。
2004年09月13日(月) |
益田勝実・編『南方熊楠随筆集』ちくま文庫 |
益田勝実・編『南方熊楠随筆集』(ちくま学芸文庫)を読んでいるところ。 「履歴書」「人柱の話」「巨樹の翁の話」「今昔物語の研究」「西暦9世紀の支那書に載せたるシンダレラ物語」「伝吉お六の話」「猫一疋の力に憑って大富となりし人の話」「虎に関する史話と伝説民俗」「俵藤太龍宮入りの話」「ダイダラホウシの足跡」「涅歯(でっし)に就て」「無言貿易」「針売の事」「神社合祀問題関係書簡」「解説 野の遺賢 益田勝実」(というラインアップは目次から) 上記のような話や事についての掘り下げた解説話なので時に眠りを催すことありしも、著者の肉声のような言葉が時々はさみこまれるとぐっと読む気になる。 「予もそんな孝行をしてみたいが子孝ならんと欲すれども父母俟たずで、海外留学中に双親とも冥土に往かれたから今さらなんともならぬ。」(232頁から引用) ほかにも面白い言いぐさがあったが、今は見つけることができず断念。 紹介される話そのものがそもそも面白いからかつい読みふけるということも多々あり。
結局のところ、そもそもの話なので、読んでいる最中に、 「あ、これは大西巨人の『神聖喜劇』を読んでいるのだったかな。」と錯覚することが、しばしばあった。熊楠の文章が『神聖喜劇』中で引用・紹介される可能性はゼロとは言えないから、あながち無茶な連想ともいえないのでは。
2004年09月12日(日) |
スタジオジブリ『熱風』2004年9月号入手。 |
スタジオジブリ『熱風』2004年9月号入手。 特集「翻訳の楽しさと恐怖」は、高畑勲監督の翻訳書出版を記念しての好企画。 執筆陣は、清水真砂子、中井久夫、アレッサンドロ・G・ジェレヴィーニ、大貫美佐子の四人。 その翻訳書とは、何かというと、フランスの詩人ジャック・プレヴェールの『ことばたち』である。「訳および注解」と「解説と注解」の二冊仕立てで3360円、透明ソフトケース入り。9月29日発売とある。 ジブリといえば宮崎駿監督の新作アニメ『ハウルの動く城』ばかりが注目を浴びている昨今だが、それだけがジブリではないようだ。 堀田善衛の作品を3冊新たに編んで出版している。 『熱風』の表紙右上の「スタジオジブリの好奇心」というフレーズが、たのもしい。
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