先に思いを告げたのは俺の方だった。 これまで、海堂は俺に練習メニューを頼んでいた。 嫌いな奴にこんなことを頼めるような奴じゃないから、好意は持ってくれてるとは思う。 思いを告げた瞬間に、この関係が崩れてしまうじゃないかと不安にかられる。 人間の心は俺のデータを持ってしても、わかり得るものではない。 いや、わかろうなんて奢った考えは持ってはいけない。
海堂に対してだけは、データとか確率とか無視してしまう。 体が勝手に動いてしまう。 自分にも、人間らしい感情を持っているんだなぁと客観的な感想を思った。 その時、自分はちょっと変だなと感じたのは言うまでもない(笑)
「なぁ、海堂。俺と付き合わねぇ?」 「…は?なんで」 「なんでって、好きだからだよ」 何も答が返ってこない。 これまでかなぁ〜と思ったその時。 「俺、男なのにいいんすか?」 おどおどと、控えめに聞いてくる。 俺の方から告白したのだから、いいに決まってる。 でも、こんな海堂に俺は惚れた。 「いいよ。俺は、海堂が好きなんだから」 「そうすか…」 「付き合ってくれる?」 「…………はい」 小さな、聞こえるかどうかギリギリの大きさで囁く。 「ありがと。よろしくね」 「俺こそ…」
こんな感じで付き合ったんだけど(実際は、乾が色々と言いくるめた(笑)) 海堂は気付いてなかったが、俺が告白してるその影で手塚がいた。 海堂に気付かれないように、そっと手塚に目をやる。
『一足遅かったな』 と、挑発するかのように海堂に手を回しながら。 海堂も、嫌がりながらも振りはらおうとはしない。 手塚の、射るような冷たい視線が突き刺さる。
でも、先に言ったものの勝ちだ。 俺は海堂を渡す気はないのだから。 いくら、手塚にだって…………!!
手塚の『卑怯な手』 これは…。 俺は知っていたから。 手塚が今日、海堂に思いを告げることを。 それをあえて先回りして、手塚の前で告げて奪った。
(俺って最悪かも………)
試合が始るほんな数分の間に、過去の出来事を思い出していた――――………
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