「海堂…」 「なんすか?」 「ん〜、何でもないよ」 「んだよ、気味悪いーの」 こんな、他愛のない話しが出来る関係にずっとなりたかった。 それが今叶って、最高に幸せだ。
ただ………………
人の気持ちを踏みつけて手に入れた至福。 海堂は、俺がどんなに汚い人間なのか知らないだろう。 いや、知られたくない。 純粋で、汚れを知らないような海堂を俺なんかで汚したくはなかった。 もしかしたら、手塚と一緒にいる方が良かったのかもしれない。 そんなことを考えることがある。 だかたといって、譲る気はないのだが。
「俺のこと好き?」 「な、何でそんなこと聞くんすか!?」 照れてるのか、顔を赤くして言う。 「海堂に言われたいなって思ってさ。あんま言ってくんないでしょ?」 好きとか言う方でないのは知ってるけど、あまりに言われないのはやっぱ寂しい。 自分が言い過ぎてる所為もあるが(苦笑) 「嫌です」 頑として、言おうとしない海堂。 だから、不安になってしまうんだ。 海堂が俺のことを好きでいてくれるのはわかるけど…。 それでも、言葉とういう形であらわして貰えなければ、信用できないこともあって。 「なんで言いたくないの?俺はこんなに好きなのにさ」 「あんたは言い過ぎ!!言わなくてもわかるだろ!?」 わかる…わかるんだけれど……。
「海堂はさ、手塚のことどう思ってる?」 「どうって、尊敬してますけど?」 「…うん、そうだろうね」 「なんで部長がここで出てくるんすか?」 不思議そうにちょこんと首を傾げる。 偶にする、こんな幼い行動がとても愛しい。 「なんとなくね。海堂って手塚のこと好きだろ?」 「そりゃ好きっすけど…?」 なんでそんなことを聞くのか、全然わからないという感じ。 「手塚には言うんだ……」 「何がすっか?」 「何でもないよ………」 海堂を自分の胸に引き寄せて、そっと囁く。 「海堂、愛してる」
悲しそうに言う乾の気持ちを理解するのは、先のことであった……。
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