日々のボヤキ

2001年11月25日(日) 知ってるんだ……

先輩が、何であんなに悲しそうに言うのか前は全然わからなかった。
でも、聞いてはいけないような気がして…。
今まで聞くことはく、考えないようにしてきた。
それは、あまりに辛くて…。
こんなに近くにいるのに、心は遠くて。
近づこうとしても、離れられるようで。
先輩は、悲しそうに笑い嬉しそうに泣く。
俺には理解出来ないよ、先輩…………。



こんな風に、すれ違ったまま付き合ってきた。
知りたいと、強く思っても知る術もなくて。
途方に暮れていたとき、部長に話しかけられた。
「どうした?最近、部活に集中できてないようだが」
「スイマセン…」
「いや、怒ってる訳ではない。ただ…心配なんだ」
「あ、大丈夫っすから」
「…乾か?」
ピクッと、海堂の肩が揺れる。
それだけで、肯定していうようなものだ。
「そうなんだな?」
「………はい。わかんないすよ。先輩の考えてることが。どうして、あんなに不安なのか」
「海堂は、乾が好きなのか?」
いきなり核心を突いた質問。
手塚には、余裕がなかった。
訪れたチャンスを、一回でも棒にふるわけにはいかない。
どんな手を使ってでも、構わないと考えている。
「……………」
『好きです』と言いたいのに、口が開かない。
言葉にならなかった。
「俺と…付き合わないか?何を考えているかわからない乾よりも、俺と付き合った方がお前は楽になれるんじゃないか?」


”楽に”
そんなに今が辛いのだろうか…?
確かに辛いけど、それ以上に嬉しさが勝っているんじゃないのだろうか…?
手塚に、答えを返すことが出来なかった。
「無言なのは、肯定ととっていいのか?」
「それは……」
「明日の、乾との試合で俺が勝ったら付き合ってくれないか?」
そんな賭けのようなことはしたくなかった。
「約束してくれるなら、乾が何で悩んでいるのか教えてやる」
一種の脅しのように思えた。
海堂が悩んでいるのを良いことに…。


それでも…………………!!!


「……いいですよ」
「本当にいいのか?」
手塚が確認する。
「いいっすよ。だって、乾先輩が負けるはずがないから……!!」
強いなと、手塚は思った。
ここまで、乾を信じる海堂を手に入れた乾が羨ましい。


「乾は………………………」


もう、後戻りは出来ないんだ―――――――――…………………


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峰谷 薫 [MAIL] [HOMEPAGE]

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