世の中は超高齢社会となり、 私の勤めている病棟はまさにそんな人たちが 体調を壊すとやってくる病棟となっている。
叫んだり、暴れたりはよくあります。 でも、その人が生きてきた何十年かの思いの先に その行為があり、その行為もちゃんと裏づけがある場合も、 多少あります。
繰り返し繰り返し入退院している患者さんもいます。 今回の絆を見せてくれたのはそんな患者さん。 高齢の姉妹で二人暮しをしている方。 キチンと着物を着て、 どちらかの姉妹が入院するとお見舞いにもきてくれる。
その日も、片方が入院し、片方がお見舞いに来ていた。 付き添いで一緒にお見舞いに来た人が 差し入れにジュースを買いに行っている間の会話に 切なくなってしまったのです。
姉(入院中)「まあ、おばあさんを私らの手で送れたのはよかったね」 妹(お見舞い)「そうね、よかったね」
姉「私らしか、もうおらんから・・・」 妹「そうね、だけど、私らしかいないって思っておかなきゃ」
姉「私がどうにかなったときは、 ○○さんとこに寄せてもらったらいいけど」 妹「私はあんたがいるところにどこでも着いていくわ」
姉「まあ、二人でできるだけ健康にやっていくのが一番だね」 妹「そうね、できるだけ健康にね」
入院しているお姉さんは家族がきているときは 穏やかに過ごしているが、帰ったとたん 認知症のため、ごそごそ危なっかしく、話もとんちんかんになる。
それでも、妹と話すときは、穏やかになるし、 妹は姉を、姉は妹を信頼して、お互い大事にして想っている。 お姉さんは最悪、施設などに入ってもおかしくないような認知症。 それでも、妹は最悪、その施設にも一緒について行く。 きっとそうなるんだろうなと思うと、 どちらが、どちらを介護しているってわけではないけれど、 支えあって生きている高齢者の、老老介護を思って切なくなる。
でも、現実はこうだ。
朝のニュースでも、やっていた通り、 高齢者に優しくない社会かもしれない、 でも、誰にも優しくない社会だし、 ちっとも改善されていく気配もない。 そして、私たちもどう対応したらいいか、わからない。 よくなって退院しても、瞬く間に帰ってくるおじいさんも居る。
それでも、今私たちが結局のところ、すがっているのは 神でも、仏でも、社会保障でも、政府でもなく、 最後には人と人との絆が頼りになるのだと思う。
とても頼りない絆でも、本人たちが しっかり結ばっていれば、きっとそれでいいけれど、 それだけでは危険だから。
私は将来どうなるんだろう? 妹とはあまり仲がよろしくない。 親戚らしい親戚は、関東方面に居るので遠い。 そういう人が増えてくるんだろうなぁとも思う。
今の職場では、遠い未来の自分を思う日々がある。 私の妹との絆はどんなものなのだろう
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